其れは君だった【文豪ストレイドッグス】ー探偵社編ー

噂其の弐 ページ33

敦side




与謝野先生が帰って来てAちゃんを診察した。

もう、何も問題ない様だ。


Aちゃんが医務室から出てきて、僕達は太宰さんに折り入って話があると外に連れ出された。



敦「だ、太宰さん、話って……」

太宰「今からする話は、依頼の事だよ、新しいね。」

敦「依頼？誰からですか？」

太宰「依頼人はね…私だよ」

A「え……？太宰さんが依頼人…？」

太宰「嗚呼、私だよ。私も手伝いたいのだけれど、生憎、サポートしか出来ないみたいでね。君達の力が必要なのだよ。」


僕達の、力？


太宰「ポートマフィアの禍狗のはなしだよ」

敦「芥川ですか？」

太宰「いいや、もう一人の方だ」

A「もう、1人？」

太宰「嗚呼、実はあまり知られていないのだけれど、1人、幹部が居るのだよ。とてもマフィアに、似つかわしい者がね、尤も、殺しが嫌いなマフィアなのだよ。」

ーー呼び名は “禍狗遣い” だーー



敦「禍狗遣い…………」





そう、あれは何時の日だっただろうか


僕は茶漬けを食べる為、ある店に来ていたのだ。僕が食べている時隣の席に座ったある女性の人が僕に話しかけてきたのだ



『…茶漬け、好きなの？』



急に声を掛けられ、驚き、噎せて居ると、



『あら、御免なさい、驚かしてしまって、こんなにも茶漬けを美味しそうに食べて居るの見て、つい、』

敦「ぐ、ゴホッ、ゴホッ、だ、大丈夫です」

噎せながら水を飲む。

『実は、私も、茶漬けが大好きなの、丁度今から頼むところよ』


にっこり笑って僕に語る。


『この店の茶漬け、美味しいからつい、何時も来ちゃうのよね』


肩に掛かった黒い髪の毛を後ろに払い白の外套を脱ぐ。そして僕の方に寄ってくる。


『相席してもよろしい？』



気付けばどうぞと言っていた。
別に断る理由なんて無いし。



『有難う』


そう云って僕の向かいの席に座った。凄く甘い、桃の様な香りが頬を撫でる。凄くクール感があって、僕よりは年上に見える。

何より優しいのだ。

その笑顔には悪さも汚れも全く無い純粋に何かを包み込む様な笑顔だ。




ポートマフィアとは逆の様な人だ。




幸せを望み、欲もなく、ただ一点だけを見つめる其の笑顔はとても、辛いことなんて吹き飛ぶくらいの笑顔だった。



其れから僕達は一緒に茶漬けを食べた。




『それでは、私はここで、』





と、云い、髪を靡かせ乍ら出て行く。





今思えば、名前くらい聞いておけば良かったと少し後悔している。

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