バグ ページ23
追いかけようと立ち上がると、Aが控えめに声を上げた。
『い、行かないで……!』
「……っ、だが」
『一緒にいて、ほしいの』
懇願する瞳に見つめられて、司はやむなく腰を下ろした。
ホログラムの影に沿って優しい手つきで撫でるように触れると、彼女は安心したように微笑む。
『わがまま言っちゃって、ごめんね』
「構わん。オレの方こそすまない……」
『ううん』
それからしばらく沈黙が続く。
先に口を開いたのは、Aだった。
『わたしって、バグなのかなあ』
まるで、苦手な科目のテストで悪い点でもとって、自分には無理だと開き直った生徒みたいな調子で呟いた彼女に、司は返す言葉が見つからなかった。
『だとしたら、司くんに嫌われちゃうね』
「……どうしてそんなこと」
『バグの語源、虫だからね。司くん虫嫌いでしょ? わたしも好きじゃないけど』
「馬鹿を言うな。オレはお前のことをバグだなんて思ったりしない! よしんばそうであったとしても、お前がオレにとって大切な存在であることに変わりはない!!」
必死になって否定すると、彼女はふわりと笑みを浮かべた。
『司くんは優しいね。わたし嬉しい』
「…………そろそろ寝るか」
『そうだね。おやすみなさい、司くん』
「ああ……、おやすみ」
司が布団に入ると、Aは満足げに微笑んでセカイへ戻って行った。
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作者名:あきいろ | 作成日時:2022年9月18日 8時