託す ページ6
＿＿＿＿＿
今日の演奏は今までで最高の出来だったと思う。
いや、もしかしたら些細なミスに気付かなかっただけかもしれない。
けれど、こんなにのびのびと思うままに弾けたのは初めてだった。
同時に、弾き切ったことへの達成感も大きい。
「聞かせてくれてありがとう。上手だったよ。」
「聞いてくれてありがとう。……私、君に会えて良かったよ。ピアノを弾くのがこんなに楽しかったのは初めてだから。」
「嬉しいことを言ってくれるね。僕もこんなに楽しんで聞けたのは初めてだよ。」
「それで、またお願いなんだけど。」
「？」
「元の私にも、ここにピアノがあることを教えてあげて。もし今は弾けないんなら、理由も合わせて聞いてくれると助かる。」
紫音は将来の自分が、折角楽しさに気付いた音楽を捨ててしまうとは思えなかった。
でも、体が元に戻った時、昨日今日の記憶がそっくりそのまま残っているとは言い切れない。
私情に巻き込んでしまうのは申し訳なかったが、吹雪に託すしかないのだ。
「うん。紫音ちゃんが元に戻ったら、君としたことは全部話すつもりだよ。それに、紫音ちゃんのピアノにも興味が湧いたところだしね。」
「よろしく。」
そう言って見せた紫音の笑顔は、年相応と言える、無邪気で可愛らしいものだった。
時刻は午後３時。
言わずもがな、おやつの時間である。
紫音と吹雪は食堂にinし、おやつ(チョコレート)を堪能(紫音だけ)していた。
１、２時間前遅めの昼食も食べ(正確には食べさせて貰い)、特に予定のない午後はまったり過ごしている。
いたら困るのだが、食堂には２人以外に人はおらず、紫音もコソコソせずにお菓子をテーブルの上にオープンしている。
マネージャーは大谷は洗濯物を取り込みに、神門は買い出しに行ったらしいので人が出入りする心配はない…と思っていたのだが。
２人のイレブンバンドが同時に音を立て、見た内容に暫く思考回路が停止した。
『緊急ミーティングを行います。"今すぐ" 食堂に集まってください。』
「嘘、何それ！？」
「多分、あと何十秒もすれば皆集まってくるよ。」
吹雪は呑気に、稲森や坂野上など素直で行動が早い連中を思い浮かべた。
「笑ってる場合じゃないでしょ。吹雪士郎も参加しなきゃいけないし、私はどこにいればいいの？」
「……困ったね。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 140人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ツナ(プロフ) - 怪盗あーるさん» わぁ、ありがとうございます！最近リアルでやらなきゃいけない事が溜まってるんですけど、更新途絶えないよう頑張ります(笑) (2020年4月27日 0時) (
レス) id: 04f33d8056 (このIDを非表示/違反報告)
怪盗あーる - いつも更新を楽しみにしています。これからも応援しています! (2020年4月26日 21時) (レス) id: 6e9264e8f1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ツナ | 作成日時：2020年4月7日 18時
