甘い ページ22
＿＿＿＿＿
「……紫音。さっきから視線を感じるんだけど、気のせいかな？」
「そうだと思う。」
勿論気のせいなんかじゃない。
対面してソファに座ってしまったのが間違いだった。
そして、正面の彼から目を逸らす度に手元の缶に口をつけてしまうので、ホットチョコレートの減りばかり速くなっていく。
再びチラッと盗み見るが、タツヤはあまり飲み進めていない。
つまりあの缶の中にはまだココアが＿＿
いや、いけない。人の飲み物まで欲しがるなんて欲張りだ。貧乏臭い。
忘れろ忘れろ。紫音は ブンブンとかぶりを振った。
しかしその一部始終を彼は見ていた。
ふっと顔を綻ばせ、コトンと缶を、２人を遮っているミニテーブルの上に置いた。
「飲む？」
「…バレてた？」
「バレバレだよ。ほら、飲むなら冷める前の方がいいと思うよ。俺の飲みかけで悪いけど…。」
「………タツヤならいいよ。頂きます…。」
最初の一言を、自分で言っておいて何故だか恥ずかしくなってしまった。
こういうシチュエーションは恋人や想い人でなくてもドキドキするものだろうか。…きっとそうだ。
散々盗み見て来たのに急に目を合わせづらくなり、たどたどしい動作でココア缶を口元まで運ぶ。
先程ホットチョコレートとココアに大差はないと言ったが、その発言は撤回する。
全く論理的じゃない、紫音の感覚的なものかもしれないが。
ココアの方が、断然甘い…気がする。
「(って…私は変態か。)」
今の精神状態が顔を現れていないことを、紫音は心から願った。
♪♪
「ありがとう。えっと…美味しかった。」
「え？あぁ、それは良かった。」
タツヤ自身、あげたココアが返ってくるとは思っていなかったので反応が遅れた。
飲んでいいのか…？これは。
何食わぬ顔で紫音の飲みかけを飲んで、セクハラになったりしないだろうか、と普段じゃ考えないようなことが頭に浮かんでくる。
そんなイレギュラーな思考が紫音に読まれたのかもしれない。
「別に、飲んでも私は気にしないけど。」
「そう？」
「…いや、気にしないって言ったら嘘か。なんて言うか…嫌じゃないってこと。」
紫音は、タツヤだけには割と素直に接してくれるのだが、時にはそれがタツヤを悩ませる。
「…紫音、それあんまり他の人に言わないでね。」
「安心して、まず人の物に口つけたのが初めてだから。」
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ツナ(プロフ) - 怪盗あーるさん» わぁ、ありがとうございます！最近リアルでやらなきゃいけない事が溜まってるんですけど、更新途絶えないよう頑張ります(笑) (2020年4月27日 0時) (
レス) id: 04f33d8056 (このIDを非表示/違反報告)
怪盗あーる - いつも更新を楽しみにしています。これからも応援しています! (2020年4月26日 21時) (レス) id: 6e9264e8f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ツナ | 作成日時：2020年4月7日 18時
