音信不通 ページ19
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「重くしてごめん。私は平気だから気にせず忘れて。」
紫音の声色と表情には優しげなものが戻りつつあった。
出来る限り精一杯の軽さで言ったのが通じたか、誰が生み出した訳でもない緊張感が一気に薄れたような気がした。
「他にはもうなかった?」
「うん。大したことじゃないけど、あとは紫音ちゃんに結婚を申し込まれたくらいかな。」
「「「………え?」」」
1、2、3秒空けて、吹雪の爆弾発言に残りの3人は素っ頓狂な声をあげた。
「大したことじゃない…んですか?」
「姫野、俺達まだ中学生だぞ?」
「僕も驚いたよ。紫音ちゃん、恋愛には興味無さそうにしてるのに。」
恐らく氷浦は天然、風丸と吹雪はわざと、紫音の恥を掻き立てるようなことを言っている。
紫音は ダン!と握り拳でテーブルを叩き、腰を浮かせて身を乗り出した。
「戯言に決まってるでしょ!吹雪士郎の言う通り、私は恋愛とか結婚とかわからないから!
余計なことは言わなくていいって…。」
尻すぼみになってそう訴えると、紫音はトレイを持って立ち上がった。
この場に居続けるとやたら美形な3人のペースに巻き込まれそうなので、足早に立ち去ろうと思った。
「あ、待て姫野。」
カウンターに向かう紫音の背中に、風丸が声をかけた。
「何?」
「暇だったら、後でタツヤのところに行ってやってくれないか?」
「言われなくても暇ならいつも行ってるけど。どうかしたの?」
「姫野が音信不通の時、ずっと部屋で心配してたからな。俺が話しかけても気付かないくらい、スマホとにらめっこしてたぞ。」
そういえばタツヤと風丸は同室だったな…と紫音は今更のように思い出す。
何度か彼の部屋を訪問したことはあったが、タイミングが合わず風丸に会うことはなかった。
今ポケットを探ってみてもスマホは入ってなさそうだったので、この足で謝りにでも行くか、とぼんやり考える。
「ありがとう。やっぱり今から行くよ。」
「ああ、よろしくな。」
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ツナ(プロフ) - 怪盗あーるさん» わぁ、ありがとうございます!最近リアルでやらなきゃいけない事が溜まってるんですけど、更新途絶えないよう頑張ります(笑) (2020年4月27日 0時) (レス) id: 04f33d8056 (このIDを非表示/違反報告)
怪盗あーる - いつも更新を楽しみにしています。これからも応援しています! (2020年4月26日 21時) (レス) id: 6e9264e8f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ツナ | 作成日時:2020年4月7日 18時