検索窓
今日:1 hit、昨日:10 hit、合計:91,681 hit

音信不通 ページ19

_____


「重くしてごめん。私は平気だから気にせず忘れて。」


紫音の声色と表情には優しげなものが戻りつつあった。

出来る限り精一杯の軽さで言ったのが通じたか、誰が生み出した訳でもない緊張感が一気に薄れたような気がした。


「他にはもうなかった?」

「うん。大したことじゃないけど、あとは紫音ちゃんに結婚を申し込まれたくらいかな。」

「「「………え?」」」


1、2、3秒空けて、吹雪の爆弾発言に残りの3人は素っ頓狂な声をあげた。


「大したことじゃない…んですか?」

「姫野、俺達まだ中学生だぞ?」

「僕も驚いたよ。紫音ちゃん、恋愛には興味無さそうにしてるのに。」


恐らく氷浦は天然、風丸と吹雪はわざと、紫音の恥を掻き立てるようなことを言っている。

紫音は ダン!と握り拳でテーブルを叩き、腰を浮かせて身を乗り出した。


「戯言に決まってるでしょ!吹雪士郎の言う通り、私は恋愛とか結婚とかわからないから!
余計なことは言わなくていいって…。」


尻すぼみになってそう訴えると、紫音はトレイを持って立ち上がった。

この場に居続けるとやたら美形な3人のペースに巻き込まれそうなので、足早に立ち去ろうと思った。


「あ、待て姫野。」


カウンターに向かう紫音の背中に、風丸が声をかけた。


「何?」

「暇だったら、後でタツヤのところに行ってやってくれないか?」

「言われなくても暇ならいつも行ってるけど。どうかしたの?」

「姫野が音信不通の時、ずっと部屋で心配してたからな。俺が話しかけても気付かないくらい、スマホとにらめっこしてたぞ。」


そういえばタツヤと風丸は同室だったな…と紫音は今更のように思い出す。

何度か彼の部屋を訪問したことはあったが、タイミングが合わず風丸に会うことはなかった。

今ポケットを探ってみてもスマホは入ってなさそうだったので、この足で謝りにでも行くか、とぼんやり考える。


「ありがとう。やっぱり今から行くよ。」

「ああ、よろしくな。」

ラッキー→←過去



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (110 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
140人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ツナ(プロフ) - 怪盗あーるさん» わぁ、ありがとうございます!最近リアルでやらなきゃいけない事が溜まってるんですけど、更新途絶えないよう頑張ります(笑) (2020年4月27日 0時) (レス) id: 04f33d8056 (このIDを非表示/違反報告)
怪盗あーる - いつも更新を楽しみにしています。これからも応援しています! (2020年4月26日 21時) (レス) id: 6e9264e8f1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ツナ | 作成日時:2020年4月7日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。