検索窓
今日:5 hit、昨日:11 hit、合計:246,844 hit

ページ10





























「頑張れ!人は心が原動力だから。心はどこまでも強くなれる!」



魅せられた。揺らいだ。心が。
変な気持ちが胸いっぱいに広がった。変だけど、嫌じゃない。心地良い何かが。
何かがストン、と心の中に収まった音がした。

炭治郎は赫灼の瞳をいっぱい私に向けてくれた。私に暖かく強い言葉を投げ掛けてくれた。


彼はにっこりと笑うと私に手を振った。
何処となく優しみを含むその表情が、Aと重なった。



「じゃ、またいつか!」



彼はそう言って颯爽と走り去ろうとした。
考えるよりも先に、口が動いた。



「…っな、何で、表を出せたの?」



“表が出たらカナヲは心のままに生きる”

そう宣言して私の銅貨を空高く弾いた彼。
出たのは、表。


投げる手元は見てた。小細工はしてなかったはず…。

どうしようもない焦燥感と何か目に見えないものが込み上げて来てならなかった。


彼はきょとんとして振り返るとニカーっと効果音がつきそうなくらいの笑顔でこう言った。



「偶然だよ。それに裏が出ても表が出るまで何度でも投げ続けようと思ってたから。」



ただ当たり前の如く、当然のようにそう口にした。
あまりにも自然に言われたものだから拍子抜けしてしまった。

その言葉は私の胸にじわじわと染み込んでいった。少しずつ、胸が暖かくなるのを覚えた。
きゅっと何かに締め付けられた。



「元気でー!」



そう言うと今度こそ、彼は走り去って行った。


きゅっと銅貨を胸に当てて握り締めた。先程まで彼が触れていた物…。

……っ今、何を、思った?
彼の温もりが微かに残る銅貨に触れていたいと、そう思った?


早鐘打つ心臓。煮えたぎるように熱い血液。温もりを宿す心。







___この日、この時。私は彼に、栗花落カナヲは竈門炭治郎に恋をした。

…でも、この想いは決して叶うことはない。



でも良いの。良いのよ、叶わなくても。

彼と彼女が幸せなら、私の想いなんて、心に宿しているだけで良いから。ただ胸の内に秘めていられるだけで良いの。

だって、私は。彼のことを好いていて。
そして。彼女のことも大好きだから。






.→←.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (505 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
254人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

hikari - この作品、めちゃくちゃ面白いです! (2022年4月24日 19時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - もし作ることができれば、『<番外編>』を、作ってほしいです。 できますか? (2022年4月7日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
若菜 - 見ていて、悲しくなって、泣きそうになりました。素晴らしい作品ですね。 (2022年3月13日 15時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - 切ないところもあったけれど、キュンキュンしました!ありがとうございました🙇 (2022年3月12日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - コメント失礼いたします。とても切なく、それでもあったかいお話で感動しました。同時に、このお話の夢主目線のお話も見てみたいなと思いました。もしお時間があり、いいなと思っていただけたらそんなお話も作っていただけたら幸いです。 (2020年11月3日 21時) (レス) id: 51a3f09150 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:白霞 | 作成日時:2020年5月30日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。