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唖然とした身体から何とか次の言葉を紡ごうとした瞬間。



「Aー!帰りましょー!」



恋柱様の声が聞こえた。その言葉にはっと我に返る。


私は今、何を言おうとした?銅貨を投げずに何かを言うことを決意した?

一寸前の自分の行動に理解ができず、ただただ混乱した。



「師範!今行きます!」



Aはそう答えると私の手を握っていた手を少し名残惜しそうに離した。

そしてあの綺麗な笑顔で私を見据えた。



「また会おうね!じゃあ!」



気づけばAの敬語も抜けていた。それに何故だか心が陽だまりのようにぽかぽかした。

走り去るAに一言、さよならだけでも言いたかった。
でもそんな私の心情なんて露知らずのAは恋柱様の元に走って行く。


___待って、待って。私、まだ貴方に何も言えてない。



汗ばむ手で銅貨をぎゅっと握り締めた。肺に空気を沢山吸い込む。肩があがるくらい大きく。



「…っあ、の!また、ね…!」



精一杯の大きな声でそう言った。
喉が痛い。こんなに大きな声を出したのはいつぶりだろう。

緊張からか身体中が汗ばんでいる。走ったわけでもないのに息切れしてしまう。


Aは走る足を止めてくるりと振り返った。
私の大きな声に少し驚いたような顔をしたけれどすぐに笑顔になって手を振って言ってくれた。



「うん!またね!」



届いた。私の声が、届いた。


Aは私が見えなくなるまで手を振ってくれた。恋柱様は微笑ましそうにAを見つめていた。

Aが視界から消え去ると、一気に脱力感に襲われてその場にへなへなと倒れ込んでしまった。

Aと出会ってからはじめての感覚ばかり。
変な感じがする。でも、嫌じゃない。

もっともっと、あの子のことが、知りたい。


















「……カナヲ…」



そしてカナヲは気づかなかったけれど、陰ながら銅貨を投げずに何かを決めたカナヲの様子を見て、しのぶとアオイは嬉しそうな笑みを浮かべていた。

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hikari - この作品、めちゃくちゃ面白いです! (2022年4月24日 19時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - もし作ることができれば、『<番外編>』を、作ってほしいです。 できますか? (2022年4月7日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
若菜 - 見ていて、悲しくなって、泣きそうになりました。素晴らしい作品ですね。 (2022年3月13日 15時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - 切ないところもあったけれど、キュンキュンしました!ありがとうございました🙇 (2022年3月12日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - コメント失礼いたします。とても切なく、それでもあったかいお話で感動しました。同時に、このお話の夢主目線のお話も見てみたいなと思いました。もしお時間があり、いいなと思っていただけたらそんなお話も作っていただけたら幸いです。 (2020年11月3日 21時) (レス) id: 51a3f09150 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白霞 | 作成日時:2020年5月30日 19時

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