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それから炭治郎のお葬式が行われて、炭治郎の遺骨は炭治郎の家族が眠る家の前に埋められた。
唯一の肉親で最愛だった兄を亡くした禰豆子ちゃんはお墓の前から動かなかった。
ずっとずっと俯いたままだった。
善逸はそんな禰豆子ちゃんの横に座り、ただ抱き締めていた。
アオイの今は二人だけにしてあげましょう、という言葉に皆んなが炭治郎の生家の中に姿を眩ませた。
伊之助は泣き顔を見られたくないようで、一人山の中に入ってしまった。
私はアオイに伊之助を追い掛けなくて良いのか聞いた。アオイは哀しそうに今は一人になりたいだろうから、と言った。
「…カナヲ…」
「なぁに、アオイ。」
炭治郎の家の前まで来て扉に手を掛けようとすると、不意にアオイが手を掴んだ。
アオイはぎゅっと私の手を握って離さない。
唇を噛み締めて、何かを言おうとしていた。
「ゆっくりで、良いよ。」
そう言うとアオイは噛み締めていた唇を離した。
そして私の瞳をじっと見つめた。
「…カナヲは、きちんと、伝えられた?」
アオイの言葉に、心臓が締め付けられた。
アオイは勘が鋭いから、私の炭治郎への気持ちだってずっと前から察していたんだと思う。
でも敢えて触れないでいてくれた。いや、触れてはいけないような気がしていたのかもしれない。
アオイは優しいから。自分の言葉で私が傷つくのが嫌だったんだと思う。
私はアオイの手を握り返した。
「うん。全部全部、伝えられたよ。後悔もないよ。」
その言葉にアオイは嬉しそうに笑った。でも涙も同時に零していたからぐちゃぐちゃだった。
でもそれは、私もきっと同じ顔。
涙と笑顔でぐちゃぐちゃなんだろう。
私とアオイは抱き締め合って泣きじゃくった。炭治郎に振られた日以来だった。こんなに涙を流したのは。
そして泣いて。泣いて泣いて泣いて。泣きまくって。
そして笑って。ぐちゃぐちゃの笑顔を互いに向けて。
こんなにぐちゃぐちゃな顔見られたら何事かと思われちゃうね、なんて話して。
私達は手を繋いで、家の中に入って行った。
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hikari - この作品、めちゃくちゃ面白いです! (2022年4月24日 19時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - もし作ることができれば、『<番外編>』を、作ってほしいです。 できますか? (2022年4月7日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
若菜 - 見ていて、悲しくなって、泣きそうになりました。素晴らしい作品ですね。 (2022年3月13日 15時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - 切ないところもあったけれど、キュンキュンしました!ありがとうございました🙇 (2022年3月12日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - コメント失礼いたします。とても切なく、それでもあったかいお話で感動しました。同時に、このお話の夢主目線のお話も見てみたいなと思いました。もしお時間があり、いいなと思っていただけたらそんなお話も作っていただけたら幸いです。 (2020年11月3日 21時) (レス) id: 51a3f09150 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白霞 | 作成日時:2020年5月30日 19時