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屋敷の中は、悲しみに包まれていた。
この場にいる者は皆、涙を零していた。
二十五になった炭治郎は眠るように、安らかにこの世を去った。
今頃亡くなった家族やA、鬼殺隊の皆んなと会っているのかな。
五年前のあの日。炭治郎が二十歳。私が二十一歳の時。
私とAが実の姉妹だと知った日。
私は彼に振られた。
泣いた。悲しかった。苦しかった。辛かった。
わかっていた結果だけれど、やっぱり悲しくて悲しくて仕方がなかった。
いっぱいいっぱい泣いた。涙が枯れるまで泣いた。涙が枯れても泣いた。嗚咽に喉を震わせた。
一人静かに泣いていたつもりだったけれど勘の良いアオイにはすぐにバレてしまった。アオイは私が何で泣いているのがは一切問わず、ただ抱き締めてくれた。背中を優しく摩ってくれた。
その優しさに私はまた泣いた。一生分の涙を流した。
でも、後悔はしていない。想いの丈を伝えたことに。どれだけ好きかを伝えたことに。
微塵も後悔はしなかった。
『ごめんな、カナヲ。俺は今でも、これからも。Aが好きなんだ。
でも、俺なんかを好いてくれて本当にありがとう。凄く、嬉しいよ。』
あの言葉に私は救われた。振られた言葉に救われるなんて可笑しな話だ。あの言葉に涙を零しているのに。あの言葉に救われるのだから。
炭治郎のAへの愛を確認できた。どれだけAを好いているのか知れて心底安堵した。
そして私の想いは届くことはなかったけれど、嬉しかったと言って貰えた。
決まり文句かもしれないけれど、とてもとても救われた。
___あれからもう五年の歳月が流れた。
私は二十六歳になった。もう立派な女性なんだ。
でも少女時代からの恋心は未だに捨てきれていない。とんだ話だ。
「…カナヲ…」
もう二度と目覚めることのない炭治郎の傍らに座り込む私の背中を、アオイが摩ってくれた。
私が失恋して辛かった時、慰めてくれた手と同じ、優しい手だった。
アオイも伊之助も善逸も禰豆子ちゃんも。
皆んな泣いていて。
私も、泣いていて。
皆んな皆んな、彼の死を嘆き悲しんだ。
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hikari - この作品、めちゃくちゃ面白いです! (2022年4月24日 19時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - もし作ることができれば、『<番外編>』を、作ってほしいです。 できますか? (2022年4月7日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
若菜 - 見ていて、悲しくなって、泣きそうになりました。素晴らしい作品ですね。 (2022年3月13日 15時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - 切ないところもあったけれど、キュンキュンしました!ありがとうございました🙇 (2022年3月12日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - コメント失礼いたします。とても切なく、それでもあったかいお話で感動しました。同時に、このお話の夢主目線のお話も見てみたいなと思いました。もしお時間があり、いいなと思っていただけたらそんなお話も作っていただけたら幸いです。 (2020年11月3日 21時) (レス) id: 51a3f09150 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白霞 | 作成日時:2020年5月30日 19時