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「っ、」



畳み掛けようとしたその時。Aは私の背後に回り首元に木刀の先端を向けた。少しでも動かせば掠ってしまう距離。



「止めっ!」



師範の声にようやく私は負けてしまったのだと理解した。

Aの動きは靱やかで凛々しく、一瞬の隙も無い。
風のように颯爽と消え去ったと思えば、雲隠れした月が現れたように背後に現れていた。

圧倒されてしまった。



「お疲れ様二人共!とっても素敵だったわ!」

「ありがとうございます!」



恋柱様はAのことをぎゅーっと抱き締めてかっこよかったわ!素敵よ!とひたすらAの頭を撫でていた。

えへへ、と照れた笑みを零すA。

仲睦まじく師弟で話す姿は、まるで本当の姉妹のように見えた。


そしてそれが羨ましいと感じた。私も師範と…。



「二人共素晴らしかったです。とても最終選別を突破したばかりの隊士だとは思えない速さでした。」



負けてしまった私の頭を師範は優しく撫でてくれた。カナヲの動きも素晴らしかったわ。次に繋げられるじゃない、と優しい言葉も掛けてくれた。



「そうだわしのぶちゃん!明日の合同任務の話をしましょう!」

「そうですね。カナヲ、Aと待ってて貰える?」



私がこくりと頷くと師範はありがとう、と柔く微笑んで恋柱様と屋敷の中に姿を眩ませた。

師範はA、とAのことを呼び捨てにして親しそうにしていたから私の知らない間に会ったことがあるのかもしれない。



そんな思考を巡らせて、気づくと私とAだけがその場に取り残された。



「栗花落さんは花の呼吸の使い手なんですね!すっごく綺麗でした…」



取り残されてしまった状況に嫌な顔ひとつせず、笑顔で私に話し掛けてくれた。


銅貨を取り出すとピンッと指で弾いた。
銅貨は空中をくるくると回る。

___表が出たら話す。裏が出たら話さない。


パシッと乾いた音と共に手の甲に銅貨が落とされた。

表。



「ありがとう。」



それ以上は何も言わなかった。



「最終選別の時も気になってたんですけどどうして銅貨を投げるんですか?」



ただ微笑んでいるだけの私に輝かしい笑顔で沢山のことを尋ねてきた。


蝶々好きなの?最終選別はどうだった?刀届くの楽しみ?

こんなに純粋な瞳で沢山のことを尋ねられたことは初めてだったから、少し吃驚してしまった。

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hikari - この作品、めちゃくちゃ面白いです! (2022年4月24日 19時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - もし作ることができれば、『<番外編>』を、作ってほしいです。 できますか? (2022年4月7日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
若菜 - 見ていて、悲しくなって、泣きそうになりました。素晴らしい作品ですね。 (2022年3月13日 15時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - 切ないところもあったけれど、キュンキュンしました!ありがとうございました🙇 (2022年3月12日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - コメント失礼いたします。とても切なく、それでもあったかいお話で感動しました。同時に、このお話の夢主目線のお話も見てみたいなと思いました。もしお時間があり、いいなと思っていただけたらそんなお話も作っていただけたら幸いです。 (2020年11月3日 21時) (レス) id: 51a3f09150 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白霞 | 作成日時:2020年5月30日 19時

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