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その日の夜は、一睡もできなかった。
一人静かに枕を濡らしていた。

恋がこんなに辛いものだなんて知らなかった。

炭治郎から微笑まれると浮き足立って心がふわふわした。甘く甘く蕩けてしまいそうになった。

彼とのほんの少しの会話や何気ない仕草に胸が早鐘打った。頬に熱を帯びた。

彼の全てに一喜一憂していた。普通の女の子のように胸を高鳴らせていた。


甘く蕩けるような幸せを感じさせられる恋心。
だからこそ、この想いが届くことのないものだと気づいた時には、心が抉られるような深い悲しみを感じるものなんだ。



Aが羨ましかった。妬ましかった。
私が彼女の立ち位置になり上がれればとどれだけ思ったことだろう。

けれど、Aのことを恨んだりすることはなかった。できなかった。


だって。
私は、Aのことが大好きなんだもの。

沢山一緒に過ごして。鍛錬して。ご飯を食べて。
いっぱいの思い出を彼女と作った。どれも楽しくて優しい思い出。


いっそ恨めたら楽だったのに。彼女がこんなに心優しくなければ少しは心が軽かったかもしれないのに。

Aのことも大好きだから、余計に辛いのよ。


























二人が恋仲になったことはすぐに知られ渡った。
まるで水の波紋のように。


なほ達はきゃー!ロマンチックですー!と恋に憧れる乙女の表情をしてAに沢山の質問を投げ掛けていた。

炭治郎さんの何処が好きなんですか?告白はどんな感じだったんですか?と無邪気に聞く。



善逸は炭治郎だけ狡いぞぉぉ!嫌味ったらしくギャーギャー喚いていたけれど、くっそ、幸せになれよ…と二人を祝福していた。

きっと善逸は音で炭治郎の気持ちを察していたのだと思う。一人静かに良かったな、炭治郎…と嬉しそうな微笑みを零している姿をたまたま見掛けた。



伊之助は恋仲?なんだそれ?と言う感じではいたがAと炭治郎が互いにとって大切な人、ということは理解したらしく子分達が幸せなら親分も幸せだぜ!と騒いでいた。

静かにしてください伊之助さん!と言うアオイの制止の声すら無視してガハハ!と笑っていた。



意外だったのは師範とアオイがそのことについて深く触れることがなかったことだ。

もしかしたら二人は私の気持ちに気づいていたのかもしれない。だから敢えて口にすることは無かったのかもしれない。

だから私は、その優しさに甘えてしまった。

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hikari - この作品、めちゃくちゃ面白いです! (2022年4月24日 19時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - もし作ることができれば、『<番外編>』を、作ってほしいです。 できますか? (2022年4月7日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
若菜 - 見ていて、悲しくなって、泣きそうになりました。素晴らしい作品ですね。 (2022年3月13日 15時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - 切ないところもあったけれど、キュンキュンしました!ありがとうございました🙇 (2022年3月12日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - コメント失礼いたします。とても切なく、それでもあったかいお話で感動しました。同時に、このお話の夢主目線のお話も見てみたいなと思いました。もしお時間があり、いいなと思っていただけたらそんなお話も作っていただけたら幸いです。 (2020年11月3日 21時) (レス) id: 51a3f09150 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白霞 | 作成日時:2020年5月30日 19時

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