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それからAは恋柱様に稽古をつけて貰うことになった。
時折蛇柱様も稽古をつけてくれることもある。
恋柱様の稽古はとてつもなく厳しく過酷なものだった。でも愛故の厳しさだった。
少しでも強くしてあげたい。私の元に必ず生きて帰って来れるように。
Aは一切の弱音を吐くことなく、血の滲むような努力を積み重ねていった。
___大切な人を守れるようになりたい。姉さんに近づきたい。
その想いがAを奮い立たせていた。
そして。
「……A、最終選別に行くことを、許可するわ。」
とうとう、最終選別へ出向く許可を得ることができた。
Aはこれまでの努力が認められたように思い、嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。
しかし同じくらい不安もあった。
最終選別へ行くということは実際に鬼と戦うということ。そして命の保証はない。
怖くて怖くて仕方がなかった。けれど。
これまでの努力を信じようと拳を握り締めた。
「……必ず、生きて帰って来てね。」
「勿論です、師範。必ず帰って来ます。」
そう言って決意の念を抱く瞳のAを送り出した。
Aが最終選別へ行く日は恋柱様と一緒に蛇柱様も一緒に見送りをした。
「A、待っているからな。」
「はい。師範のこと、お願いします。」
蛇柱様はAの頭をわしゃわしゃと撫でた。きっと何処にぶつければ良いのかわからない不安を蛇柱様も抱えていたのだろう。
それくらい、Aのことを大切に思っていたから。
笑顔で手を振るA。そしてAの姿が見えなくなると、恋柱様はへなへなとその場に崩れ落ちてしまった。
「甘露寺…」
「…大丈夫、大丈夫。あの子は、Aは強いもの。」
「…ああ。なんたって、甘露寺の継子だからな。」
二人はAの帰りを、手を合わせて祈った。
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hikari - この作品、めちゃくちゃ面白いです! (2022年4月24日 19時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - もし作ることができれば、『<番外編>』を、作ってほしいです。 できますか? (2022年4月7日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
若菜 - 見ていて、悲しくなって、泣きそうになりました。素晴らしい作品ですね。 (2022年3月13日 15時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - 切ないところもあったけれど、キュンキュンしました!ありがとうございました🙇 (2022年3月12日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - コメント失礼いたします。とても切なく、それでもあったかいお話で感動しました。同時に、このお話の夢主目線のお話も見てみたいなと思いました。もしお時間があり、いいなと思っていただけたらそんなお話も作っていただけたら幸いです。 (2020年11月3日 21時) (レス) id: 51a3f09150 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白霞 | 作成日時:2020年5月30日 19時