動き出す日常 ページ5
*
駅を出て5分程のところにスーパーがあり、眩しすぎる程の灯りから流石に人通りを感じられる。買物カゴを手に取り店に入ると遅くない時間帯にしては人が少なく、店員の事務的な挨拶が遠くから聞こえた。
夜は簡単にパスタで済ますつもりだ。トマト系にしようと考えながらナスや玉ねぎやトマト、コンソメ、トマトの水煮パックをカゴに入れた後、肝心な麺を買い忘れたことを思い出して乾麺のブースに向かう。
乾麺のブースには一人、先客がいた。何やら乾麺を見ながら電話をしてるらしく、1袋取りたいが隣に並ぶのも憚られるため歩みを弛めてその人に近づく。あれ、こんなことが以前にもあった気がする、なんて既視感を感じながら進むと、予想以上に大きなその人にまた既視感を感じた。
｢……どれっすか、太さとか茹で時間とかめっちゃあるんやけど……｣
近づくと電話の内容が聞こえてきてしまい、申し訳ない気もしたが確かにパスタの麺って種類が多くて難しい。
その人は頼まれているようで、普段料理をしなかったら分かりにくいと感じるだろう。しかし、久しぶりに聞く関西弁に親近感を覚えながら少し懐かしい気分になった。
低めで掠れ気味の声で話すその人は私の気配を察すると、頭を少し下げ1歩下がった。フードを被っているせいかあまり顔は伺いしれないが、丁寧な仕草だった。
隙を見てその人の目の前にあったスパゲティの7分湯で小袋パッケージに手を伸ばす。
私の腕は瞬きの間にその人に動きを阻まれた。
あまりに一瞬のことで驚いて、顔を上げると先程まで誰かと電話していたその人の左腕が私の右腕を痛いほど強い力で掴んでいた。
私よりも驚いた顔でこちらを見ており、その人の電話口から【おーい、汐恩？どうした？】と名前を呼ぶ声が鮮明に聞こえるほど近くにその姿があった。
顔を見て、朝の情報番組を思い出していた。
今朝見た美しい青年だった。驚いたが芸能人もこんな田舎に住むんだ、なんて呑気なことを考えていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 295人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sour(プロフ) - はなさん» はなさん、不慣れなもので……ご親切に教えていただきありがとうございます！！ (2021年11月27日 21時) (
レス) id: 6bf6ad2f5e (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - オリジナルフラグたってますよ……！ (2021年11月27日 16時) (レス) id: 1f4f011eda (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sour | 作成日時：2021年11月26日 14時
