信じるもの【トラファルガー・ロー】 (ページ36)

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船への帰路を辿る私とキャプテンは今までのような気まずさは無かったものの、2人の空間には沈黙が続いていた。

｢...怪我は？｣

先に口を開いたのはキャプテンだった。

『私がそんなものするとでも？』

｢確かにな｣

また沈黙が訪れる。

今しかないと考えた私はキャプテンの“あのこと”について聞くことにした。

『キャプテン』

｢なんだ？｣

『...一昨日キャプテンがホテル街を歩いていたのを見ました。女性の方と一緒に』

私は溢れそうな涙をグッと堪え話を続ける。

『キャプテンは...あの女性と』

｢Aが思っているようなことは俺はしていない｣

『じゃあ何で...』

｢あの日＿＿＿＿｣

＿＿＿＿＿＿＿＿＿

ローside

あの日俺は何も目的を持たずにただ街を歩いていた。

街を歩いていると、路地裏に気配がしたもんで覗いてみるとそこには女が倒れていた。

海賊が人助けだなんてたかが知れてるが、何せ今は“旅人”としてこの街にいる。逆に放っておく方が怪しいので、近くの建物に運んで治療をしてやった。

そして1時間もしない内に女は目を覚ました。

｢...あなたは？｣

｢最近ここに来た旅人だ。目ェ覚ましたんなら俺は帰る｣

｢待って下さい！｣

建物から出ようとすると、女は俺の腕を掴み引き止めた。正直、面倒だったので適当な理由を付けてこの場を立ち去ろうとした。

｢...余り他人と関わるのは得意じゃないんだが｣

｢命を助けてくれた恩人に恩を返さないなんて無礼に当たります｣

｢恩という程の事はしてねェ｣

｢是非、私の家に！｣

｢悪ィが、｣

｢そんな言わずに！｣

なんだコイツ、力強すぎだろッ！？

俺は掴まれた腕を引っ張られ、女の家に向かうことになった。途中で｢逃げないように｣と、腕をガッチリとホールドされた。

そして島のほぼ中心にあるソイツの家に行った。
何でもソイツの家は島一番の医者の家だった。興味深い本も沢山置いてあったので予想以上に時間を潰してしまった。

その女の親であろう人物が、好きな本を持って行っていいと言うので数冊貰うことにし、船に帰った。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿

『そ、そうだったんですか』

｢まァホテル街は途中で通ったが｢近道だ｣とか言って通っただけで家に行くまではどこも寄ってないな｣