信じるもの【トラファルガー・ロー】 (ページ32)

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ローside

｢は...？Aが戻ってきてない？｣

船に戻るとペンギンが非常に慌てた様子でこちらに来てその話を始めた。

｢そうなんすよ！！今日は、昨日助けた婆さんの娘さんの家に行くって...帰るのも夕方だって言うけどあまりに遅いし...！｣

｢...船番は一人だけ置いて他全員はAを探し出せ！特に西のドーリミ街を中心に島全体をだ！
2人1組になって各班と電伝虫で情報共有しながら捜索しろ！｣

｢｢｢アイアイ！キャプテン！！｣｣｣

＿＿＿＿＿＿＿＿

貴方side

気が付くと少し薄暗い部屋に寝ていた。

辺りを見渡すと、自分のそばには薄めの毛布。自分の右側の上に小さな窓。人の出入りは出来ないくらい小さい。正面には古く重そうな鉄の扉。

それ以外は何も無かった。

他に何かないかと体を動かそうとした時、手首と足首に金属音と共に重みを感じた。

...成程、捕らわれたということか。

一昨日の賊の残党か？
いや、でも誰かに襲われて気を失った訳では無い。何か急に眠気に襲われたのと、力が抜けたのだ。

思考を巡らせていると、正面の扉が音を立てて開いた。そこに居たのは＿＿＿

｢あらもう起きたのね、普通なら明日の朝までは起きないはずなんだけど｣

『ス、ミレ...さん？』

今日、楽しい時間を過ごしたはずのスミレさんだった。でも私が知っているスミレさんの顔ではなかった。

｢ふふっ私がこんなヤツだったって思いもしなかった？でしょうね、街では私は古い雑貨屋の大人しい娘。誰も私の正体なんて知らないわ｣

怪しく、魔女のような顔をする彼女。

理解に時間がかかった。私を捕らえたのはスミレさんなのか？

そして私は嫌な考えが過った。

＿＿＿＿＿子ども達を攫ったのも、自分の母であるお婆さんも全てスミレさんがやった事なのではないか、と。

それを考えた時にはもう自分の口が勝手に動いていた。

『スミレ、さん...子供たちの誘拐事件も、一昨日のお婆さん...貴女の母を攫ったのも全て...』

｢全て私がやったことよ｣

私の質問には即答と言っていいほどの速さで、気持ちというものが空の言葉に聞こえた。

｢捜索側がね、私に容疑をかけようとしてたのよ。だからあのババアに捕まってもらったわ。自分の母親を手に掛けるなんて出来るわけないでしょう？そこを狙った訳。まんまと皆引っ掛ってくれたわ｣