【H×H】クロロに愛されるだけ【短編集】 (ページ41)

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授業が終わって、さぁ帰ろうという時。
先程まで気配もなかった雨が、ザーザーと降るのを見て私は固まった。

天気予報、今日見なかったな。
傘持ってない…どうしよ。

昇降口で突っ立っている間にも、周りの生徒は傘を広げてすたすた帰っていく。

みんなちゃんと天気予報見ててえらい。すごい。

『う、ずぶ濡れ覚悟で行くか…』
「大丈夫?」

ふと横から声が聞こえて振り向けば、クロロ先輩がいた。
え!?今私話しかけられた!?
いや、自意識過剰??
少し周りを見た。私以外いない。

『ぇ、と』
「1年生かな?傘、忘れちゃったんだ?」
『は、はい』

こっちみて話してる、よね!?
緊張が止まらない。

「俺の傘、大きいから一緒に入る?」
『え、え!?それは流石に申し訳ないです!!』

不測の事態である。思わず断った。

「でも、この雨の中走るのは風邪ひいちゃうよ?」

そう言われて前を向くと土砂降りの止みそうにない雨。

『あ、でも…』
「遠慮しなくていいよ。ほら、おいで」

なんでそんなにかっこいいんですか。
思わず出そうになった言葉を呑み込む。

いいのか?いいのか!?

『じゃあ、お言葉に甘えて…』
「そんなに畏まらなくてもいいのに」

ふふ、と微笑むクロロ先輩はさながら女神のようでした。心臓発作起こすぞこら。

先輩の傘に入れば距離が近い近い。
心臓発作起こすぞこら。
幸せすぎて死ぬ。時よ止まれ。

「君、名前は?あ、俺はクロロっていうんだ」
『A、です』
「Aちゃんか、いい名前だね」

ありがとうございますと答えた私の声は、震えてないだろうか。
私の顔、真っ赤だろうな。
てか先輩に名前呼ばれた。これは夢か?

「Aちゃんは家どこら辺なの?」
『あ、えっと、〇〇町です』
「へぇ!俺と近いね!」
『え、そうなんですか?』

意外だ、登校時に見かけたことは無かったのに。

「せっかくだから俺ん家、くる?」
『へ!?』

熱い顔がもっと熱くなった。
それを見た先輩は悪戯っ子のように、冗談だよと笑う。

やめてくれ、確実に殺しに来てる。

「もう少し仲良くなってからだね」
『えっ!?』

クロロ先輩は、今度は冗談だとは言わない。
え?ほんとに?

家まで送ってくよと言われて断ったが、本当に送ってもらってしまった。

「バイバイ、Aちゃん」

別れ際に手を振られたので振り返し、玄関のドアを閉めた。

…いまの、現実??
深く溜息を吐いてドアの前で崩れ落ちた。

あぁ、好き。