【H×H】クロロに愛されるだけ【短編集】 (ページ19)

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無理だと思ったら撤退しろ。
そう部下達には伝えたが。

どうやら相手は逃がしてもくれないらしい。

「《こちら3番隊!敵は...ぐあぁあ!!》」
「《敵は5番隊の方に向かっ...!》」

絶望的だった。
どう足掻いても、希望はみえないほどに。

「なっ、こいつら体に爆弾をつけて...!?」
「ぎゃああ!!」

敵は、死を恐れていない。
戦争において、一番の敵は恐怖だ。
こいつらにはそれがないというのか。

『危ない!!』
「っ!ありがとうございます」

部下を庇いつつ、戦っていくうちに、
私は相手のある弱点に気づく。
連携が取れていない。

『《一気に全てを倒そうとするな、確実に、1人ずつ倒せ!撤退が最優先だということも忘れるな!》』

頼む。少しでも、生き残ってくれ。

_____
「思っていたより粘るな」

それどころか、少し立ち直ってきている。
だが、もう遅い。

盤上の駒を前に進めた。
A、お前はもう逃げられないんだよ。

「チェックメイト」

そろそろ迎えに行こうか。

_____
『駄目、だったか...』

先程の叫び声もなく、そこは静寂に包まれていた。
気づけば周りは死体だらけ。
自分の体を見ればボロボロだった。

ただ1人、私だけが生き残った。

『何か用ですか。クロロ中将』
「まぁ、そう警戒するな。会えて光栄だ、A中将」

目の前の男を睨みつける。
この場の命全てを奪った男。
一体何を考えている?

「今の気分はどうだ?」
『最悪ですね。理性無くしてあんたに飛びかかりたいくらいには』
「そうか」

古くからの友人に世間話でもしているかのような軽さ。
殺したい。だが、悔しいことに適わないだろう。
万全な状態でも、きっと負ける。
案外冷静な自分を恨んだ。

『それを聞きに来ただけ?』
「いや?」

クク、と笑って、楽しそうな表情をする。
一々癇に障るやつだ。

『殺すなら早くしろ』
「別に殺す気は無い。
ただ面白そうだから捕まえに来た」
『は?』

眉を顰めた。
捕まえる?

『捕まえてどうする気だ。私は何も吐かないぞ』
「そうだな、俺の秘書にでもなってもらおうか?」
『はぁ?』

いよいよこいつが何言ってるのか分からなくなってきた。
秘書??馬鹿なの??

『何故だ?』
「お前は俺に負けたんだ。
俺がお前を好きにする権利はあるだろう?」

違う、そうじゃない!!

「なんにしろ、連れていくぞ」
『ちょっ、待て!』

この男、めちゃくちゃだ!!

これから先、彼に振り回されることになるとは知る由もない。