伍拾肆 ページ6
__ここは、どこだ。
『…は、』
家だ。
もう4年くらい見ていなかった、家だ。
私の家族がいる、家。
「A」
『…お母さん?』
「どうしたん惚けた顔して。さっさと学校行きな」
これは夢だ。わかってはいる。
わかってはいるけど。
「は、ちょっとあんた何泣いとるん!?調子悪いん!?学校が嫌なん!?」
『ちが、くて…』
あぁ、思ったより私は家族が恋しかったみたいだ。
涙が止まらない。
我慢しようとして耐えきれなくて、しゃくりをあげて泣く。
そんな私を見てお母さんは焦ったような顔をしていた。
「ほらちょっと中入って、今日は遅刻してもいいから」
お母さんは優しい。
いや特別優しいとかじゃないんだ。普通に口煩いし叱るし。
でも、こんなにも愛情を注がれていたんだ、私。こんなにも平凡な日常が幸せだって知らなかった。
少し休めと、ソファに座らされた。
ああ、ダメだ。だってこれは夢なはずだ。
目覚めなければ。
…ゆめ、だろうか?ほんとうに?
令和に戻っただけじゃない?
だってこれが普通なんだから。普通に戻っただけだ。
そうやって希望を見出そうとしている時だった。
ピンポーン、と家のチャイムがなった。
お母さんがそれに出る。
すると玄関から声が聞こえた。
「こんにちは!Aはいるでしょうか!」
「あら杏寿郎くんじゃないの」
ざわ、と心が騒ぐ。
「少し調子が悪いみたいで…」
「む、それは心配だ!上がっても?」
「どうぞどうぞ」
がちゃ、とドアが閉まる音がする。
ドクン、と心臓が跳ね上がった。
「A、泣いているのか?」
いえ止まりました今。
制服を着た煉獄さんがいた。
…なんてこった。
『れん、ごくさん…』
「うん?変な呼び方をするな、いつも通り杏寿郎と呼べばいいだろう」
いつも杏寿郎って呼んでんのか。まじかよ。
『…杏寿郎…』
「うむ、どうした?」
穴があったら入りたいとはこのことだ。
なんて夢を見てるんだ私は。目覚めろ、目覚めてくれ。恥ずかしさで死んでしまう。
私は令和に戻りたいが、鬼滅の世界の人達と離れたくないんだろう。
更に言ってしまえば煉獄さんと。
…まて、思ったけど私煉獄さんのこと“杏寿郎”って呼びたいの?
だってわざわざ夢の設定で出てきたということは…。
アァーーー!!!
恥ずかしい!知りたくなかった!!
『死にたい…』
「む!?そんなことを言わないでくれ!
Aがいないと俺は生きていけない!」
『あぁぁ…』
ライフはマイナスになった。
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Haruka(プロフ) - 煉獄さん推しなのでとても感動しました。 (2021年9月10日 22時) (レス) id: c2932dcf70 (このIDを非表示/違反報告)
ナキサ(プロフ) - 蓬莱寺さん» ありがとうございます!!更新頑張ります!! (2021年1月12日 23時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
ナキサ(プロフ) - すみっコぐらし好きの隅華(仮)さん» すみません、中々時間が取れなくて…!!続きを待ってくれているのはとても嬉しいです、ありがとうございます! (2021年1月12日 23時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
蓬莱寺(プロフ) - 続き気になります。更新楽しみにしてます (2021年1月12日 8時) (レス) id: de353d3df7 (このIDを非表示/違反報告)
すみっコぐらし好きの隅華(仮) - 早く更新して下さい!お願いします!m(_ _)m (2021年1月6日 20時) (レス) id: d6919b39a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナキサ | 作成日時:2020年12月19日 2時