【煉獄杏寿郎】全力で救いたい！【トリップ】

肆拾 ページ42

夜が明ける。
黒の装っていた空は少しずつ青みを帯び、白くもえているようだった。

「ああ、もう夜明けだ」

いかにも残念そうに、童磨が呟いた。

「あーあ、食べたかったなぁ、二人とも。救ってあげたかった」
『結構です』

救うだなんだうるせいやい！
救われなくても十分幸せだわ！

夜の呼吸 伍ノ型＿＿闇夜の一刻

悪足掻きに刀を振る。
油断していたのか、刃は童磨の頸まで届いた。

「っ、と、危ない」

しかし寸のところで切り落とせなかった。
逃がしたくないのに。

「また遊ぼうぜ、Aちゃん」

そう言って童磨は去ってしまった。

くら、と身体が傾く。

ああ、生き残った。
逃がしたけど、カナエさんも生きている。

いや、しかしこれはカナエさんの力が大きかった。
もっと強くなりたいなぁ…もっと、強く…。

あぁでも今は、もう体が動きそうにない。

「うっ…」
『カナエ、さん？』

凛として立っていたカナエさんが突然蹲る。
体に鞭を打って近寄れば、呼吸に異変があった。

『もしかして肺を、』
「え、ぇ…そうみたい…」

肺が一部壊死したようね、と苦しそうに言う。

「姉さん！」

その時、急いで駆け寄る人物がいた。
しのぶさんだ。

「姉さん！大丈夫！？」
「しのぶ…私は大丈夫よ」
『カナエさんは肺を、やられています、今すぐ治療を！』

そう言えば、しのぶさんは驚き動揺し、しかしすぐに冷静に処置し始めた。
うん、やっぱりしのぶさんはこの頃から頼れるなぁ…。私も手伝わねば。
そう思い立ち上がろうとすれば、しのぶさんは私を睨む。

「言っておきますけど貴方も重傷ですから！絶対！安静に！」
『あ、はい…』

凄い剣幕で怒られてしまった。

『少し、眠たいな…』

なんだか寒い。血が足りてないのかな。
童磨の扇、すごい切れ味だったから、血がいっぱいだ 。本当に命懸けだったな。

でも、生きてる。生きてるよ。
本当に、よかった。









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