参拾陸《視点なし》 ページ38
「カァ!南南東ノ街デ救援要請!」
『了解。…それでは、後は頼みますね!』
「はい!」
そうしてAは隠に優しく微笑んでから、また鎹烏の誘導に従って駆け抜ける。
一般隊士から見れば、その姿は消えたようにしか見えなかった。
「すげぇよなぁ、あの人」
「あれで柱じゃないんだもんな」
重傷を負った者を手早く処置した後。
その場にいた隠や隊士達が言葉を零した。
A A。
夜の呼吸の使い手。
階級は最高位の甲。
柱ではないものの、実力は柱と同等だと噂されている。
「何より優しい!可愛い!」
「それなんだよ。本気で惚れそう」
「分かるわ」
男の隊士は顔を赤くして話し始める。
下級隊士にも優しく丁寧に接するA。助けに来る姿はまるで女神のようだと大袈裟に語られた。
手を繋ぎたいだの結婚したいだのと盛り上がっていく。
しかし1人の隊士によって、その盛り上がりが消えることとなる。
「…でもさ、炎柱様と付き合ってるんじゃね?」
その場はしん、と静まり返った。
「そ、それはお前、分かんねぇだろ」
「そうそう!…ただ炎柱様は明らかにA様のこと好きだよな…」
「お前…とうとう口にしたな…」
それは皆わかっていたが黙っていたことだった。
「…炎柱様に勝てるわけねぇ…早くも失恋した…」
「おう…今度一緒に飯食いに行こうぜ…」
「慰め会でもするか…」
その場にいた者は全員意気消沈し、軽傷の者はとぼとぼと藤の家まで歩いていった。
産屋敷邸にて。
「Aは下弦を倒したんだね。凄い子だ」
鎹烏の報告を受け、呟く。
Aは今月に入って下弦を1体倒し、その他の鬼は10近く狩っている。
柱になる為の最低条件__鬼を50体以上倒していること、もしくは下弦を倒していること__は、とうに満たしていた。
「柱にすることも考えなくてはいけないね」
Aのお陰で他の剣士達も士気が高まっている。
柱になる意思は無いようだったけれど、ぜひ就任してもらいたい。
柱になる空きがないのなら、“9人”という数を増やすことも考えておいてもいいかもしれない。
「それにしても、Aは休めているのかな」
毎晩のように鬼を狩ったと報告を受けるため、少し心配だった。
その働きぶりは柱ともう変わらないほどだ。
今度また話を聞いてみようか、と笑みを浮かべた。
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蒼の戦姫ナキサ(プロフ) - 5262さん» コメントありがとうございます!励みになります! (2020年12月17日 11時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
5262(プロフ) - 初めましてコメント失礼致します。続きが楽しみです!大変だと思いますが更新頑張ってください、応援してます (2020年12月15日 17時) (レス) id: e1b40e07f2 (このIDを非表示/違反報告)
蒼の戦姫ナキサ(プロフ) - コメントありがとうございます!夜はいいですよね! (2020年12月7日 23時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
レイレイン - 夜が好きッ!?私と同じだ… (2020年12月7日 17時) (レス) id: 5a04a92c31 (このIDを非表示/違反報告)
蒼の戦姫ナキサ(プロフ) - yersk0402さん» ありがとうございます!!煉獄さんに会いたいですよね!!更新頑張ります! (2020年12月6日 20時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナキサ | 作成日時:2020年11月28日 20時