弐拾壱 ページ23
最終選別、七日目。
人助けをしつつ走っていると、突然キーンと耳鳴りが鳴る。ぞわりと寒気がした。
重い気配を察知した。鬼だ。
目を閉じてあたりに集中し、気配を探る。
どこだ、どこだ。
『…見つけた』
すぐさま目を開け駆け出す。
嫌な予感がする。
「ひっ、や、やめろっ！！ぐぁっ！」
そんな声が聞こえる。
男の子が首を掴まれているのが見えた。…手鬼だ。
私は一気に足のスピードを速める。
『水の呼吸…っ！』
あぁ、だめ。まって。
「がっ…！！」
ボキッ。
男の子の首が、折れる音がした。
『水面切り』
手鬼の腕を切り落とす。
掴まれていた男の子は、地面へと叩きつけられた。
間に、合わなかった。
あと少し、あと一秒あれば。
小さな絶望が胸に広がった。
…時は戻らない。
ならばもう何も考えるな。
「お前…ひひっ！また来た、俺の可愛い狐」
『…』
目を細めて手鬼はクスクス笑う。
「おぉっと、人の話は聞くもんだ」
刀を構え振ろうとしたが、寸のところで止める。手鬼が握っていたのは、先程死んでしまった男の子だった。盾として使われると、切れない。
「十二…十三…お前で十四だ。
鱗滝の弟子を喰った数！」
『…』
心の奥から、激しい感情が湧いてくるのが分かる。怒りだ。
しかしそれとは別の、静かで冷えきった心もあった。
そう、とても静かだ。
木々が揺れる音。飛び立つ鳥の鳴き声。冷たい風。満月はじっと私を見ている。
夜が、さざめいた。
＿＿夜の、呼吸。
「ギャアッ！！」
鱗滝さんには一切教わらなかった動き、呼吸法、型。
それなのに何故か体が勝手に動く。
鋭く刃は弧を描いた。
腕を切り落とし、男の子を抱える。
せめて、埋葬してやらねば。
「お前ぇえ！！」
「ひぃっ」
怒った様子の手鬼に、近くにいた女の子が腰を抜かしていた。手鬼は腕を伸ばしてくるが全て切り払う。
隙ができた間に女の子もすぐさま抱え、全速力で駆け抜けた。逃げるだけなら楽勝だ。夜明けも近い。
『…これでいい』
この鬼は、炭治郎に任せよう。
鱗滝さんの悲しみの元凶であるのは分かってる。勿論殺したい。
けれど、あの鬼にも救いは必要だと思うから。
『もう大丈夫ですよ』
担いでいた二人を下ろす。
女の子は涙を一杯にして、ありがとうございますと震えた声で言った。
死んでしまった男の子の開いたままの目をそっと閉じた。藤の花がある場所まで運ぼう。
この日私は、命が零れ落ちていく感覚を初めて体感したのだ。
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蒼の戦姫ナキサ(プロフ) - 5262さん» コメントありがとうございます！励みになります！ (2020年12月17日 11時) (
レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
5262(プロフ) - 初めましてコメント失礼致します。続きが楽しみです！大変だと思いますが更新頑張ってください、応援してます (2020年12月15日 17時) (レス) id: e1b40e07f2 (このIDを非表示/違反報告)
蒼の戦姫ナキサ(プロフ) - コメントありがとうございます！夜はいいですよね！ (2020年12月7日 23時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
レイレイン - 夜が好きッ！？私と同じだ… (2020年12月7日 17時) (レス) id: 5a04a92c31 (このIDを非表示/違反報告)
蒼の戦姫ナキサ(プロフ) - yersk0402さん» ありがとうございます！！煉獄さんに会いたいですよね！！更新頑張ります！ (2020年12月6日 20時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナキサ
| 作成日時：2020年11月28日 20時
