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21限目 ページ23

夜。

銭湯に入った後、今日は満月だと思い出し外に出る。
ひんやりとした夜風が頬を撫でる。
湯に入って熱くなった体にはそれが気持ちよかった。

そして見上げれば、大きな三日月。
…あぁ、そうだった。忘れていた。
もう満月は見れない。

雲一つない夜空、月がぼんやり淡く輝いていた。

…綺麗。
また、魅入ってしまう。


どれだけ眺めていたか、聞き慣れた声によって現実に引き戻された。

「A」

声がするほうを見れば、そこには赤羽くんがいた。

「何してんの?」
『赤羽くんこそ』
「名前で呼んでってば。
いちご煮オレ買いに来たんだよね〜」

それ、と指差す先には自販機があった。

「で、なに。初恋相手に見惚れてたの?」
『うん』
「…ふーん」

そう言って赤羽くんも月を見上げた。

「ねぇA。
もし俺がAの事、好きって言ったらどうする?」

急な質問で一瞬固まる。
好き。それは恋という意味の?

いや、どちらにせよ。

『どうもしない』
「どうもしないんだ。じゃあ付き合い前提の告白だとすれば?」
『…断る』
「そう。まぁいいけど。
A」

赤羽くんを見れば、彼の月のように光る双眸に射抜かれる。

取り憑かれたように、目が離せなくなった。


「月が綺麗だね」


私だって馬鹿じゃない。
この流れのこの言葉の意味くらい簡単に理解できた。出来てしまった。

有名な文豪、夏目漱石が"I love you"を訳した言葉。



_____そんな真っ直ぐな目で、見ないでよ


『…夜更けには、沈む。綺麗なのは夜だけ』

そう答えれば、間が空いて、赤羽くんは目を見開く。
そしてゆっくりと笑みを浮かべた。

「へぇ、そっか。そう思うんだ?」

声が普段より幾分か低い。
怒った?分からない。

今の赤羽くんは、何を考えているのか全く分からない。

「あーダメ、やっぱ俺月はそんなに好きじゃないんだよね。

Aが好き。これから疑うことも出来ないくらいアプローチするから覚悟してなよ」

そう言ってそっと触れるような口付けをして、旅館の中へと入っていった。







『…え』

22限目 *カルマ視点→←20限目



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ムマ(プロフ) - シリアスがシリアルになってて朝ごはんかな?と…w (2023年2月26日 7時) (レス) @page36 id: 6ac26bb231 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶 - とても良い作品ですね!ゲームを禁止してから数年。この作品を見つけました!この感想?を見てるか分かりませんが14限目(16ページ目)でA組からD組はグリーン車…ってところA組からE組になってますよ。 (2021年5月6日 17時) (レス) id: 5aab78de35 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)ミミー(プロフ) - カメラくんカルマ仕舞ってはツボ笑笑 (2020年11月6日 17時) (レス) id: 0e4633d09f (このIDを非表示/違反報告)
推しが尊い(プロフ) - 蒼の戦姫ナキサさん» そうだったんですね!てっきり間違われていると思ったので、、 この作品応援してます!これからも更新頑張ってください! (2020年5月11日 2時) (レス) id: b8ffafd9e5 (このIDを非表示/違反報告)
蒼の戦姫ナキサ(プロフ) - 推しが尊いさん» お恥ずかしながら、わざとなんです汗「いや逆だし」とカルマくんからツッコミも入ってます… (2020年5月11日 2時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼の戦姫ナキサ | 作成日時:2020年4月25日 22時

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