浮気性【三途春千夜】

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「出てけってどう言う意味だよ」

『そのままだよ。この家出てって』

「何言ってんのかわかんねぇ」

『春ちゃん出て行かないなら私が出てく』




一向に出て行く気配のない春ちゃんを見て荷物をまとめ始める。

とりあえず今はこれ以上春ちゃんと一緒に居たら駄目だ、って本能が言ってる。



私が荷物をまとめてる間も横で“おい、冗談だろ？”“1回話そうぜ”なんて言ってる春ちゃん。

そんな春ちゃんを無視してれば“テメェ無視してんじゃねぇよ”って何故か逆ギレ。


ほんと、意味わかんない。




しばらくして大体の荷物をまとめ終えた私。

残りは今度春ちゃんのいない時に黙って取りにこようかな、なんて考えてる。





『しばらく春ちゃんとは距離置く』

「ンな事して意味あんのかよ」

『逆に何もしなきゃこの状況変わらないでしょ』

「……」

『じゃあ、またね』




そう言い残して家を出る私。

不思議と春ちゃんはそれ以上私を止めはしなかった。



別れる、じゃなくて距離を置く、っていう風にしたのは、多分私自身の甘え。

こんな状況になっても春ちゃんと別れるって言う決断ができないなんて、ほんと自分でもどうかしてると思う。





さて、問題は此処からだ。


家を出たのはいいが、行く場所がない。

実家だって遠すぎるし、友達の家に長い間泊めてって言うのも少し申し訳ない。


てかなんで私がでてったんだろう。

意地でも春ちゃん追い出してやればよかった。


あー、そう考えたらなんかイライラしてきたし。






「A？」

『は？』

「おっと、なんか怒ってる〜？」

『あ、ごめん。蘭ちゃんか、』





心の中で春ちゃんへの文句を言っていれば、後ろから誰かに声をかけられ思わずそう返してしまう。

振り向いてみればそんな私に対して少し驚いた顔をしている蘭ちゃんの姿が。



仕事帰りだろうか、いつものスーツを身に纏っていて朝はついていなかった返り血のようなものが付着している。

またやったな。




私の様子を見た蘭ちゃんは何かを察したようで私に近づくと優しく腰のあたりを抱いて自分に引き寄せる。





「家出〜？」

『まぁ、そんなとこ』

「んじゃ俺ん家行こっか。竜胆もいるし」

『え、でも…』

「なに？ホテルのがいい？」

『あ、大丈夫です』





即座に遠慮する私に対して“つれねぇな〜”と笑う蘭ちゃん。


でも泊まるところが見つかってよかった。

竜胆いるのはあれだけど、蘭ちゃんも一緒なら手も出せないだろうし。



とりあえず今は頼ることにしよう。

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