花屋のお兄さん (ページ10)

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第9話消えたヒーローページ10

春瀬side

首は少し痛いが動かせないほどでは無い

病室を見渡すとベッドの隣にある机に1枚の画用紙が置いてあるのが目に入った

春瀬「…よかった」

紙にはクレヨンで書かれた平仮名が並んでおり、その下には動物等のイラストが描いてあった

『おにいちゃんありがとう』

机にはクレヨンも置いてあった、恐らく助けた女の子が寝ている間に来てくれていたのだろう

そんな事を考えていると

ナースコールを聞きつけた医者と看護師がやってきた

彼らは俺の体調を確認した後、事故について説明してくれた

撥ねられ意識を失った俺は救急車で運ばれ検査を行った

肋骨はひびが入っていたが腕は綺麗に折れていた上に脳の損傷や後遺症は無く、医者曰くこれだけで済んだのは奇跡だそうだ

肩や肘等の関節に多少の痛みはあるが打撲程度で数日程度で治るらしく、ギプスを付けた状態にはなるが、退院しようと思えば明日にも退院できるらしい

俺の運と身体強いな…

いや

本来これで俺は死ぬはずだった

俺の脳裏に花垣君が浮かんだ

怪我の状態を一通り説明し終えた医者は次に、今回の事故の惨状を教えてくれた

運転していた男は俺たちを撥ねた後進路変更し少し蛇行運転したものの電柱と衝突して死亡

俺が庇った女の子はかすり傷はあるものの命に別状は無く治療が終わり寝ている俺に少しの間付き添ってくれていたが迎えに来た母親と家に帰ったそうだ

あの子が無事で本当によかった

その時ふと事故の様子を思い出す

今にも泣きそうな顔でこちらに駆け寄ってきた花垣君

彼は今一体どうしているんだろう

俺は花垣君の事を医者に問いかけた

春瀬「あの…学ランを着た金髪でリーゼントの髪型の少年って病院(ここ)に来ましたか？」

俺は結局、死んではいないものの、車に撥ねられた

それはきっと彼が望んだ未来では無い未来(今)

彼に望んでいない未来に進ませてしまったことを謝らないと

そんな中、医者の口から出た言葉は予想外のものだった

医者「少年…？現場には君と少女…そして運転手、搬送の際に少女のお兄さんがいたけれど…救急隊員からの報告はありませんし、救急車から搬送された時も居ませんでしたよ」

春瀬「そう、ですか」

＿花垣武道＿

ふと現れては命を助けてくれた恩人(ヒーロー)

君は何処に行ってしまったんだろう

俺はもう一度君に会うことができるのだろうか