第一章 ページ6
・
ハッと目が覚めた。
冷たい感触に顔を触ると、頬を涙が伝っている。
「あれ?私、死んだはずじゃ…」
周りを見回せば、そこは見慣れた部屋だった。
私が生まれ育った家の自室。
何が何だかわからなくて、自分の身体を見下ろす。
全体的に、いつもより小さいような…
それに、目線が低い。
ものが大きく感じる。
困惑しきった頭で考えられるのは、ひとつだけ。
「小さい頃の自分に戻ってる?」
両手を握ったり開いたりしてから、自分の頬を摘む。するとしっかりと痛みが走り、思わず「痛ッ」と声が零れ落ちた。
生前、杏寿郎が「頬を摘んで痛かったらそれは夢ではない」と昔言っていた。
それならこれは、現実なのだろうか。
とりあえず誰かに話を聞いて現状を把握しなくては。
ここは私の実家だから、今が五年以上前なら母がいるはず。
急いで台所へ向かうと、そこには懐かしい後ろ姿があった。
「お母さん!」
思わず母に抱きついて、顔を埋める。
懐かしい匂い。優しい体温。あぁ、母が生きて、ここにいる。
十五歳の時に病で命を落とした母に会うのは、これが五年ぶりだった。死ぬ間際の母の姿を思い出し、胸がぎゅっと痛む。
「あらまぁ、A。怖い夢でも見たの?」
涙を流す私の頭を困ったように撫でる母に、ゆるゆると首を振った。
あれが夢なら良かったけど、実際はそうじゃない。
そうだ、聞くべきことを聞かなければ。
「お母さん、私今何歳?」
「え?」
案の定驚いた顔をする母に、少し申し訳ない気持ちになる。
「十歳よ。忘れちゃったの?」
「…あ、そうだった!私寝惚けてたみたい」
へらりと笑うと、母は「驚いたわ…もう、Aったら」と再び料理を始めてしまった。
なるほど、今私は十歳か。
杏寿郎が死ぬまで丁度後十年…
受け入れて前に進むしかない。
私が望むのは、杏寿郎が死なない未来。
そのためにできることは…
「鬼殺隊に入り、あの人を守ること」
そう呟いて、固く拳を握りしめた。
・
567人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みーた(プロフ) - 麗羽さん» 泣かないでぇ(´;ω;`) (2019年10月12日 21時) (レス) id: 8487e33076 (このIDを非表示/違反報告)
麗羽(プロフ) - 普通に泣きました……( ;∀;) (2019年10月12日 13時) (レス) id: 835b4d5769 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - みーたさん» ありがとうございます! (2019年10月12日 12時) (レス) id: 483e5f8c50 (このIDを非表示/違反報告)
みーた(プロフ) - ちぃさん» 申し訳ございませんでした!すぐにルビをふってまいりますので少々お待ちください! (2019年10月11日 22時) (レス) id: 8487e33076 (このIDを非表示/違反報告)
みーた(プロフ) - おさるさん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年10月11日 22時) (レス) id: 8487e33076 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みーた x他1人 | 作成日時:2019年9月29日 20時