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「何食べとるん？」
披露宴が盛り上がって来た頃、鬱くんが私の横に並んだ。「ローストビーフ。美味しいで」と返すと「ふーん」と興味なさげ。自分から聞いて来たんやろがい。
高校の時も彼は自分から聞いて来て返答すれば興味なさそうに相槌を打っていたなと思い出しもうひとつ変わらないところを見つけて一人で嬉しくなる。
「美味いなら一口ちょうだい」
パカッと口を開けて来る。いわゆるあーんと言うやつをせがまれているのだとわかり顔が熱くなる。
「じ、自分で取ればええやろ！ 仰山あるんやから！」
「いけずー」
口をとんがらせながら彼は食事を取りに行く。ちょっと膨らんだ頬やとんがらせた口が可愛いなと思ったり、素直にあげればよかったと思ったり。
大きなお皿に控えめに料理を取り戻ってきた鬱くんはちょっとずつちょっとずつそれらを口に運ぶ。少食なのも相変わらずのようだ。
「この10年、何してた？」
「え？ いや、特に……」
突然の問いかけの意図はわからないが本当に特にこれと言って変わったことをしているわけではなくごく普通に生活して来た事をなんだが恥ずかしくなった。普通に大学に行って普通に就職して転職して、結婚をするわけでもなく。男性とお付き合いをしてもなんだが違う気がして別れるを何度かした程度だ。
ちらりと鬱くんを見ればバッチリと目が合う。そして彼は私のフォークを持つ左手を見て視線を逸らす。
「……僕のこと思い出すことあった？」
その問いかけに心臓が大きく脈を打つ。バクバクバクバク、心の中が見透かされているようで居た堪れない。
「そりゃ、あったよ……」
「そっか。……僕もよう考えとった。居残りした日Aちゃんにあれ言われてからずっと君のこと考えとった」
「え……？」
「なんか僕の全部見られた気分で恥ずかしかったけど、それからずっと気になってたんよな君のこと」
鮮明に記憶に残っているホッチキスの弾けるような音。顔に落ちる前髪。唇に押し当てられた彼の熱い指。全てが昨日のことのように思い出せる。
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野々宮蓮花(プロフ) - 唐揚げさん» こんにちは。コメントありがとうございます！そう言って頂けてなによりです。まだまだ沢山の作品が続きますので、引き続き楽しんで頂けたら幸いと存じます。どうぞよろしくお願いします！ (2021年1月25日 20時) (
レス) id: 720637d64b (このIDを非表示/違反報告)
唐揚げ(プロフ) - どの作品も少しドキドキ？しながら読ませていただきました。ut先生オンリーということで似たような作品が並ぶのかなぁと思いましたが、バリエーション豊かで楽しかったです。 (2021年1月25日 19時) (レス) id: 6975836a4f (このIDを非表示/違反報告)
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