Lily Honor ページ29
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いつも彼は他人に花を持たせる。
例えば、体育祭。足が速いくせに「俺はそんなん向いとらんから〜」と一歩下がり特段目立たない順番へと自ら志願する。
例えば、文化祭。彼の馴染みのいい声を活かした主役を託そうとしたって彼はのらりくらりとそれを躱して裏方へと行くのだ。
例えば、恋愛。彼が本気で人を好きになったところを一度だって見たとこがない。優しい彼はたくさんの女の子から好かれていて、しかしそれでも彼は本気にならない。彼の彼女となった女の子はみんな最後には違う人を好きになる。別れを告げた彼女達を眺める彼の背中はなんだか寂しげだ。でも、それでも、彼はいつだって他人を責めない。
「幸せになってな」
それが彼の……彼なりの魔法の言葉だった。
＊
鬱くんとは高校二年と三年の時に同じクラスだった。
人間観察が趣味のようなものだった私はよくクラスの中心人物のシャオロンくんを遠巻きに眺めていた。彼はいつでもキラキラしていて何をするにも誰もが彼に注目を集めていた。
体育祭では男女混合リレーのアンカーに選ばれ1位をもぎ取り、文化祭の劇では主役を演じその演技力で観客を魅了した。
しかしある時ふと、気づく。いつも彼、シャオロンくんの横にいる鬱くんの姿に。
下手に出て、人を盛り上げて、人が得するように立ち回って、いつでも笑ってシャオロンくんと同じくらいに笑いを集めている姿を見て、ああ、この人は『人を立てる』のが上手いんだと思ったその瞬間を今でもはっきり思い出せる。
「人の不幸の上に幸せは成り立たない」とよく言うけれど、その言葉以上に鬱くんは誰も不幸にせず、人を幸せにするだけでなくその幸せで自分も幸せになれるんだなと子供ながらに感心したし尊敬した。
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野々宮蓮花(プロフ) - 唐揚げさん» こんにちは。コメントありがとうございます！そう言って頂けてなによりです。まだまだ沢山の作品が続きますので、引き続き楽しんで頂けたら幸いと存じます。どうぞよろしくお願いします！ (2021年1月25日 20時) (
レス) id: 720637d64b (このIDを非表示/違反報告)
唐揚げ(プロフ) - どの作品も少しドキドキ？しながら読ませていただきました。ut先生オンリーということで似たような作品が並ぶのかなぁと思いましたが、バリエーション豊かで楽しかったです。 (2021年1月25日 19時) (レス) id: 6975836a4f (このIDを非表示/違反報告)
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