Affect052 ページ8
Aside
「A」
目の前には迅さんの胸元があった。少し上から降ってくる声。壁にぴったりとくっついた彼の体。その正面でトリガーを両手で握る私。はあ、はあ、と切れた私の息。
「………」
どうしてこうなったのか覚えていないほど、私はあの頃の、太刀川隊が初めて完敗したランク戦のことを思い出していた。どうしてだろう、あの頃みたいに、わくわくする気持ちがない。
「ちゃんと狙って、ココだ」
とんとん、と迅さんが自分の左胸を指差した。私はそこまでブレードの先を持っては行くが、カタカタと震えてその先へ行けない。そこを貫く事ができない。
「……今はいいんじゃなかったの」
ついこの間だ。今は斬れなくてもいいって言ってくれたのは。なのに何で今こんなことをさせるのか…なんてわがままが、頭の中を支配していた。迅さんの方が正しいことなんて分かってるのに。
あの時の『今』って、そんな短期間の話だったのか？
「それは＿＿その時はそう言った方が、お前のためになると思ったからだよ」
ズキ、と心が鳴った。
何それ、何それ。今まで私に寄り添って、心から言ってくれてると思ってきたそれが、私をあやすために言ったみたいな、本心じゃないけどそれで満足するから言ってやってた、的な。
いや、よく考えろ、迅さんはそういう人じゃん。
「じゃあ、そう言わないほうがためになるんですね、今日は」
この人は感情で動くんじゃない、"より良い未来"のために動く人だ。今回はたまたま、ここ一年はたまたま"より良い未来"のだめに動くことが私にとっても優しい未来だっただけだ。だから私の欲しい言葉を言ってくれてただけだ。
馬鹿だな私、その状況に甘えて彼の行動を都合よく解釈して。
『お前はおれの弟子だ。それ以上でも、以下でもないよ』
前だって一度、そうやって勝手に解釈したせいで思い知らされたことあったのに。そのときにちゃんと、ああ私勘違いしちゃだめだ、この人は私個人のためになんか動いてないって理解しなきゃなって、思ったのに。
「何か視えてるんですか、迅さん」
今までは斬れなくても良い未来だった。けどきっと何かが視えて、そのためには斬れなきゃいけないんだろう。だからこんなことをするんだ。
「……A、お前はおれの弟子だろ」
「はい」
「今おれは師匠として斬ることを要求してる、だったらおまえはそれに従うべきなんじゃないのか？」
「！」
「このままずっと斬れないなら＿＿おれはお前の師匠をやめる」
何かが、心の中で音を立てた。
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亜桜(プロフ) - レイさん» ありがとうございます！過去編の方の親友と高校の親友は別人になります;;表記がややこしかったですよね！修正しておきますね〜！！ (2020年6月9日 12時) (
レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - とても面白いです！過去編の親友の名前は高校の親友と同じ名前でいいんでしょうか？ (2020年6月8日 23時) (レス) id: b6ab3f2fc3 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - そるとさん» コメントありがとうございます！マイペース更新で申し訳ないです;;がんばります！ (2020年5月21日 23時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - すごく面白かったです。更新されることがあったら楽しみに待ってます！ (2020年5月21日 19時) (レス) id: 6009fd27be (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - みっとんさん» ありがとうございます！がんばります〜！ (2020年2月8日 10時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜桜 | 作成日時：2020年1月4日 1時
