7 ページ7
「……し？もしもーし？」
誰かに声をかけられて、ドンケべラルの意識は覚醒する。どうやらあのまま眠ってしまっていたらしい。重い瞼を擦って軽く唸りながら、ドンケべラルは起き上がる。そして目を開けた。
そこにいたのは、奇妙な生物だった。二足歩行で、人間の女性のように見えたが……真っ黒な鳥の頭部を持っていた。片腕は翼、片腕は鳥の脚のようになっている。清潔感のあるスーツに身を包んでいて、例えるならOLのような雰囲気があった。
「あ、起きました？こんにちは、ドンケべラルさん！私はツヴァイ、ここムネモシュネ図書館の受付です。お話はリコリスさんから聞いてます。記憶喪失なんですね？何かお困りの事があったらいつでもお声掛けくださいね！」
「び、びっぐりしだ……ええど、こんにぢはツヴァイ。お世話さなります」
目をゴシゴシ擦ってから、目の前の生物が夢幻でないと悟って……ドンケべラルはツヴァイの顔を見ながら挨拶を返した。そうして気付いたが、ツヴァイは黄色と桃色のオッドアイの持ち主のようだ。左右で異なる色をした瞳が物珍しく、つい覗き込んでしまいそうになる。
ツヴァイは驚いたように目を見開いて、数歩下がった。ドンケべラルははっとして、目を逸らす。物珍しさで失礼な事をしてしまったとすぐに気付いたのだ。
「申し訳ね、失礼な事しちまった。あんまり綺麗な目だったがら、つい」
「ああ、いえいえ！気にしないでください！……むしろ嬉しいです、あたしの目綺麗って言ってもらえて」
ツヴァイは気にしていない事を表そうと、ひらひらと翼を振ってみせる。ドンケべラルはぺこりと頭を下げながら、思考する。受付嬢らしきこのツヴァイという生物からは、一切の敵意を感じない。どうやら、本当に無害らしい。色々と尋ねて現状を把握してみても良いかもしれない。自分が何故ここに来たのか理由を忘れてしまっているけど、もしかするとそれがきっかけで何か思い出せるかもしれないから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
