検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:3,478 hit

33 ページ33

「え、それ塔の事が書かれた本なんですか?」

 珠稍(すやや)がアリスの本を覗き込む。そうだよ〜と明るい調子で答えるアリス。

「リコリスちゃん、塔について知りたがっていたから、後で教えてあげようと思ってたんだ。あ、2人もこれ読んでみる?」

 アリスは傍にいた水饅頭を両手に包んで立ち上がる。ドンケべラルと珠稍(すやや)はしゃがんで、本を覗き込んだ。1番最初のページを捲る。

『あるところに神がいた。神から1つの世界が生まれ、そこで神は沢山の物を創った』

『やがて神は原初の世界に飽き、いくつもの世界、いくつもの物質、いくつもの魂、そしていくつもの自分自身を創り出した』

『だが結局神は最後には飽きてしまった。神はムネモシュネという化身を被った。ムネモシュネは神の創った全てを1つの世界に纏める事にした』

『そうしてムネモシュネは図書館を創り上げた。全ての世界の全てを納めた箱庭を。全てが存在するこの図書館で、全てを手にした彼は眠っている』

 ドンケべラルは本を閉じた。この塔はムネモシュネという存在が創り上げた場所らしいけど……そのムネモシュネは神の化身、らしい。そもそも化身って何なのだろう。

「これ……リコリスさんが見たらものすごく喜びそうですね」

「うん!」

 珠稍(すやや)が本を本棚に戻す。アリスは手のひらの中の水饅頭を本棚の傍へ置いた。水饅頭はアリスを見つめているが、特に動こうとはしない。ドンケべラルは気になって水饅頭を覗き込んだ。

 水饅頭はドンケべラルの方を見ている……ように思える。ゴマ粒みたいな目をしているから、どこを向いているのか全然分からないのだ。

「ドンケべラルちゃん、早く行こ?」

「ああ……分がった、今えぐ」

34→←32



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (8 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
6人がお気に入り
オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ミクミキ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2024年12月30日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。