検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:3,538 hit

32 ページ32

「あ、皆!」

 アリスと鉢合わせしたのは、部屋を10回以上通り抜けた後だった。彼女は床に座り、大きな本を広げている。アリスのすぐ傍には、ドンケべラルが遭遇したのより少し大きい水饅頭がいた。

「アリスさん、そろそろ帰ろうと思ってたんですけど……もしかしてそれ、探してた本ですか?」

「うん!珠稍(すやや)ちゃん達も読む?」

 ドンケべラルはアリスの方へと歩み寄り、本を覗き込もうとして……ふと思い出した。そういえば、自分は彼らがどんな物を求めてこの塔へやって来たのか知らない。アリスはどんな物を求めているのだろうか。

「なあ、アリスは何求めでこごさ来だんだ?」

「んー……」

 アリスは本から顔を上げないまま言う。

「よく分かんない。アリス、ただ知らない事を知りたいだけだもん」

 ドンケべラルはふうんと頷いて、次に珠稍(すやや)の方を見る。珠稍(すやや)はドンケべラルの意思を察したようで、言った。

「私のご先祖様、有名な読書家だったらしいんですよ。エルデ教の司祭だったとか……第8聖者のエリヤって聞いた事ありません?」

「恵みのエリヤでしょ?沢山の人を奇跡で助けたっていう」

 珠稍(すやや)の言葉にアリスが返した。ドンケべラルにはさっぱりだったが、何となくそのエリヤという人物が優れた功績を残したのだろうという事は理解した。

「それで、折角だから知ってみたかったんです。ご先祖様の事とか、ご先祖様が登った塔がどんな場所なのか。それに何より……楽しそうじゃないですか、こういうの。死ぬなら普通の日常をずーっと繰り返して死ぬより、冒険をして死んでみたかったんですよね」

 やっぱりこんなところに来るから、冒険が好きなのだろうか。他の2人もそうなのだろうかとドンケべラルは考えながら、アリスの本を覗き込む。

『そうしてムネモシュネは図書館を創り上げた。全ての世界の全てを納めた箱庭を。全てが存在するこの図書館で、全てを手にした彼は眠っている』

 絵本のようだ。開かれている最後のページには、その文章と、眠っている人間が描かれている。その人物は黒い髪と浅黒い肌をしていて、男性にも女性にも見える。

「塔は全てを創った神様が眠っているんだって。どんな神様なんだろうね?アリス、会ってみたいなぁ」

33→←31



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (8 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
6人がお気に入り
オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ミクミキ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2024年12月30日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。