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そこは四方にそれぞれ1つの扉と、本棚が真ん中に1つあるだけの、幾何学模様が刻まれた部屋だった。異様に無機質で、何と言うべきか、どこか現実味のない空間だ。
「テルちゃん、いる〜？」
「いるよー。本を探しに来たんだね？そっちの子は新しい読書家さん？」
アリスが声を張り上げると、声がした。特定の場所から発せられる声ではない。部屋から直接響いてくるかのような……部屋そのものが話しかけてきているかのような声だ。姿はどこにも見当たらない。
「ぼくはテルミナス。汎用型文明蒐集装置テルミナスだよ。テルくんって呼んでも良いよ！」
子供っぽい口調だ。あまり害があるとは思えないタイプである。ドンケべラルはそれに少し驚きつつも、挨拶を返した。
「おらはドンケべラル。記憶がねえがら、それ取り戻してえんだ。よろしく」
「よろしくね、ドンケべラル！早速で悪いんだけどさ、インタビューに答えてもらう事ってできるかな？ぼく、読書家の人と喋るのが好きなんだ」
インタビュー……それって本当に普通のインタビューなんだろうか。ちらりと
でもインタビューなんて。ドンケべラルは生首になったリコリスの事を思い出していた。あんな事をする恐ろしい司書もいれば、このテルミナスのように無害な司書もいるのか。司書というのは多様なようである。
「構わねえよ。でもインタビューなんてされだ事ねえがら緊張するな」
「大丈夫だよ。そこまで変な事は質問しないし、それに分からなければ分からないって言えば良いんだ。それも立派な回答だもの」
「ふぅん」
よく分からないが、そういう物らしい。あまり気負う必要はなさそうだ。
「アリス、先に本読んでくるね！」
アリスが入ってきたのとは別の扉へ入っていく。
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