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「……え?」
ドンケべラルは目を丸くする。
「これは慣らしみたいなものさ。書庫の雰囲気に慣れて、次からの探索にあまり緊張しすぎないようにする為のね。さっきも言ったように、家具や装飾品に触りさえしなければそう危険はない。判断が難しいというのなら、本以外に触らなければ良い」
リコリスは本から目を離さずに言った。
“彼の言う通りさ。キミはこれから本を求める。書庫の探索に今のうちに慣れておいて損はないだろう。何せ司書って皆おかしいから。ああでも注意して。彼はキミを助けはしないよ。実力のない……フフッ、実力のない人間は死んでも構わないって思っているだろうから”
悪魔の口が囁く。ドンケべラルは少し考える。リコリスの言う通り、今のうちに雰囲気を掴んでおくべきだろう。悪魔の口の言葉に乗りたくはないが……この剣の言葉も正しい。少なくともリコリスは、ドンケべラルが危機に陥っても助けはしないだろう。人手が欲しいとは言っていたが、役に立たなければむしろいない方が良い。警告を聞き入れずにここで死ぬようならそれまでと考える方が自然だ。
だがそれは悪い事ではない。彼らには彼らの目的があるのはドンケべラルも分かっている。
「じゃあ行ってくる。ねがったらこごさ戻ってぐっから」
「いいや、多分僕の方が先に読み終わる。読み終わったら書庫を出るんだ。談話室で待ち合わせだ、良いね?」
談話室……リコリス達と出会ったあの空間の事だろう。ドンケべラルは頷いて、リコリスに背を向け、歩き始めた。
書庫は異様に暗い。ところどころに蝋燭やランタンが置いてあるが、この暗黒には焼け石に水だ。ドンケべラルは細心の注意を払って足を前へと進めていく。もし足元にあの読書家の成れの果てがいたら?踏んでしまったら、司書が激怒するかもしれない。
「ねぇ、アナタ様はどうして塔に来たの?」

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