17 ページ17
「あの司書は静寂な淀み。彼は直接こちらに敵対する事は少ない大人しい司書だ。ただし自分の大切にしている物を破壊されると怒り狂うするし、親睦を深めた読書家が自分の元を離れようとすれば捕縛する」
長い通路を歩きながらリコリスは言う。ドンケべラルは足元に気を付けながらその後を追う。
「司書達はそれぞれ試練と呼ばれる課題を僕達に課してくる。今回は僕が試練をクリアしていたから、友達の君も含めて免れられたけどね……試練はクリアが難しい物が殆どだ。書庫の探索は、基本的には司書達から隠れつつ行うよ」
“そう、彼の言う通り。司書達はどいつもこいつもおかしいのさ。満たされない欲望を抱えている。それを満たそうと、同じ事を繰り返し続けているんだよ。愚かで哀れだよ、ねぇ？”
「……静がにしてぐれ」
ドンケべラルは悪魔の口にそう言う。悪魔の口から放たれる言葉は……本当に、ドンケべラルの精神を刺激するのだ。しかし、悪魔の口の言葉が分かるのは、持ち主であるドンケべラルだけ。
「ああ、すまない。でもそこまで緊張せずとも大丈夫だよ。この階層には敵対的な存在はいないから」
「違う。リコリスにでねぐ……こいづに言ったんだ」
自分のすぐ傍の悪魔の口を指差して弁解する。銀の刃に紫の模様が刻まれた美しい剣は、静かに浮遊している。リコリスはじっと見て……リコリスの鞄から本とペンが飛び出してきた。本はページが開いた状態で空中に留まる。
「どんな事を話しかけられるんだい？研究の為に教えてくれないか？」
「司書の事喋ってだ。げんとも、うんと嫌な声なんだ。聞ぎ入れだらいげねえって思うような……そだ声。それがら、自分は嘘つかねえども言ってだ」
リコリスは相槌を打つ。宙に浮かぶペンが、本にサラサラとメモを取っていった。これも魔法なのだろうか。
「……なるほど、ありがとう。もうつくよ」
ペンと本がリコリスの鞄に入っていく。足も止まる。本棚にはいくつかの本が収まっていた。リコリスはその中から1冊取り出して読み始める。
「本を探しに行っても良いよ。もしかしたらこの階層に君が求める本があるかもしれないからね。ただし、あまり離れすぎないように」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
