【Dear All My Road】1冊目 (ページ2)

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「ええど……あんの、どちら様だ？おらはドンケべラルっでんだ。おら、気が付いたらこごにいて……」

　困惑しながらも、コミュニケーションがとれると判断したからだろう。ドンケべラルは訛りの強い口調で、おずおずと堕落大海老に話しかける。

　ドンケべラルには何も分かっていなかった。気が付いたら見知らぬ場所にいて、わけの分からない奇妙な生物に話しかけられたのだから、冷静でいられないのは当然の事だ。彼にとって、目の前の生物は現状ほぼ唯一の情報源、命綱のようなものだった。

　でも堕落大海老はそれに答えない。返答の代わりに、大きく口を開けた。人間の物とは全く違う、恐ろしい構造をした口を。そして、勢い良く口を閉じた。それと同時に、ドンケべラルはバランスを取れなくなって倒れ込む。

　それは仕方のない事だった。何故なら……堕落大海老が口を閉じた瞬間、まるで食い千切られたかのように、彼の右足の膝から先が消えたから。

「あ……？」

　わけが分からないといった様子のドンケべラル。それを、口から赤い血を垂れ流しながら何かを咀嚼する堕落大海老が楽しげに見ていた。堕落大海老が食べているのは、えぐり抜いたドンケべラルの右足なのだけど……ドンケべラルはそれに気付けない。あまりにも突然の事で、脳が受け付けてくれなかったんだ。

「うわっ？！大丈夫か？」

　状況が呑み込めていないドンケべラルに、別の声が届く。振り向くと、開かれた扉から銀髪の男が覗いていた。男はドンケべラルの肩を掴み、力任せに扉の方へと引きずり込む。

「ばいばい。ふふ、楽しませてね」

　堕落大海老はそれを邪魔せず、邪悪な微笑みを浮かべながら頬杖をして眺めていた。