【Dear All My Road】1冊目 (ページ1)

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「……え？」

　見渡す限りの海。その中心にぽつんと浮かぶ石の島。そこに青年、ドンケべラルは立っていた。美しい紺色の瞳を持ったその青年は、困惑したように自分の足元を見ている。

　ここはどこなのか。そう考えて、次に自分が何故こんなところにいるのか覚えていない事に気が付いたらしい。慌てて周囲を見渡した。まず目に入ったのは、不自然な扉。空間に貼り付けたかのような、奇妙な扉があった。次に目に入ったのは、海へと伸びる階段。石の島をくり抜いて作られたその階段は、海の底まで続いているように見えた。

　ドンケべラルは、わけが分からないといった様子だったけど……扉へと近付いた。海へ続く階段は降りれないと判断したらしい。彼が扉の取っ手に手をかけたその時だった。

「ねぇ、こんにちは。キミは読書家かな？」

　ドンケべラルの背後から声がした。振り向くとそこには……奇妙な生き物がいた。例えるなら、海老の人魚。人魚は石の島に乗り上げて、ドンケべラルを白目のない目で見ていた。ドンケべラルの見た事のない生き物だったからか、彼はフリーズしてしまう。

「ん？ああ……ははは。なるほどね、そういう事」

　振り向いたドンケべラルの顔を見て、何か得心がいったようにその人魚は言う。その笑顔があまりにも不気味で、ドンケべラルは思わず身震いをしていた。

「こんにちは、ワタシはアイザック。あるいは堕落大海老。キミに贈り物をしてあげるよ」

　海老の人魚……堕落大海老はそう言って、小首を傾げて見せた。