対面 ページ10
無言のまま数秒見つめ合う。
まさか入ってきたのが弟だとは思ってなかったから、当然僕は驚いた。でもそれ以上に嬉しかったんだ。
どうしてだとか不平等だとかそんな暗い気持ち、今はどうでもよくなるくらいに。
元気そうで良かった。もう一度会えて良かった。
弟「…………なに、お前」
「……ッ」
緊張で声が出ない。口の中がカラカラに乾いて、喉がキュッと細くなって、それなのに心臓は飛び出そうなほどドキドキいっている。
弟「俺の、何なの」
「ぇ、と、僕は……君の、その……」
弟「まあ大体解るけど。兄弟……っていうより、双子?」
まだうまく出ない声の代わりに、慌てて何度も頷く。
どうしよう、変な奴って思われたかも。まともに喋ることも出来ないって思われたら嫌だ。
僕が口篭っている間に、弟は廊下で草履を脱ぐと、部屋に入ってキョロキョロし始めた。
端から本棚を物色しながら、弟が問う。
弟「名前。なんて言うの」
なまえ……名前?
「えっと……名前は、五条……?」
弟「そんなの知ってるよ、俺も五条だもん。
そうじゃなくて、お前自身の名前聞いてんの」
「あ……そう、そうだよね。ごめん……僕には、名前が無いんだ」
だから教えてあげられない、と言うと、はァ??と振り返った弟は困惑の表情をしていたので、慌てて捕捉する。
「ほ……ほら、僕なんて本当は存在してちゃいけないから、名前をつけるわけにはいかないのは当然でしょ?だから、五条だけ。
でも大丈夫だよ。困ったこと、ないから……僕に話しかける人もいないし、サインとかすることもないし……」
弟「当然?」
弟の表情が一層険しくなる。何か変なことを言ってしまっただろうか。
……もしかしたら、聞かれてもいないのにベラベラと僕のことを話したのが気に障ったのかも?
彼女も必要最低限の会話しか取り合ってくれなかったし、そういえばあまり喋るなと言われていたんだった。僕のことから話題を変えなくちゃ。
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梅チョコ(プロフ) - Part1完結しました!ありがとうございました(* ´ ▽ ` *)続編もよろしくお願いします〜! (2021年3月27日 18時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
梅チョコ(元Thatn)(プロフ) - ヒエッ……待って……書きかけのお話を非表示でこそっと更新したつもりだったのに出てた……(´;ω;`) (2021年2月12日 20時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
Thatn(プロフ) - トップにそれっぽいこと書いてる癖に、未だ男主くんの術式が出てこないという……ね……あと変な時間の更新多い……( ̄▽ ̄;) (2021年2月2日 13時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
Thatn(プロフ) - 蒼音さん» すみません!ボード見てなくて気付きませんでした……。私もボードの方に返信させて頂きました。長文ですが一読頂ければと思います。これからはボードの方もちゃんと確認します! (2021年1月31日 8時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
蒼音(プロフ) - 読まれていない可能性があったので一応、報告を。コメント欄に入りきらなかったので、作者様のボードの方にて意見を書かせて頂きました。方針が決まったのであれば不要な意見になるかもしれませんが・・・。 (2021年1月31日 2時) (レス) id: 70bc04b5ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梅チョコ | 作成日時:2021年1月26日 0時