第百五十八話 ページ9
その時、がらりと保健室の扉が開く。
現れたのは暁と胡桃だった。
「おねーちゃーん!」
「胡桃、暁!」
胡桃はまっすぐ私のほうへ向かってきて、ばふりとベッドに飛び乗り私に抱き着いた。
そんな妹を難なく受け止め、そういえば二人は私の文化祭に遊びに来ていたんだと思い出す。
「劇見たぞ。なかなか面白かった」
「おねーちゃん、かわいかった!」
「んへへ、ありがとう。胡桃もアリスの服着ようね」
「着るー!」
両手をあげて喜ぶ胡桃の頭を撫でる。
苦しみも悲しみもこの子の笑顔を見ればすべてかき消される。幸せ。
「……あんたは、確か奏音の担任の」
「ん、あぁ、笹塚だ。邦月のお兄さんだったな」
「あぁ、妹がいつもお世話になってる。いろいろと」
軽く頭を下げる暁のセリフになんだか含みがある気がして、私は思わず口を開いた。
「ちょ、暁……いろいろとって何さ」
「……だって、こいつだろ。お前が毎朝弁当作ってんの」
「いや、そうだけど……っていうか、言葉遣い! 仮にも私の先生なんだから!」
「仮にもって邦月お前な……」
呆れた顔で見下ろしてくる先生はとりあえず置いとく。
軽く商売みたいになっている毎朝のお弁当作りは、もちろん今もまだ続いている。だいぶ先生の好みは把握してきたつもりだ。
「うちの母親はガード固いからな、言っとくけど」
「え、ちょ、待っ、どういう意味!? 暁それ!」
「別に」
「……肝に銘じとくよ」
男二人だけに通じている会話のせいで取り残されているみたいな感じ。
もういいや、胡桃と遊んでよ。
「姉御、起きてる……っと」
「あれ、先生、と……えーっと」
「あれ、暁お兄さんだー!」
開いたままの扉の向こうから樹、和樹くん、そして千佳の順で現れる。
千佳は暁を見つけて手を挙げて挨拶し、暁も「おー」と返事をしつつ手を挙げ返した。
そういえば樹とは幼馴染的な関係ではあるけど家に招いたこともなければ兄弟を紹介したこともなかったな。和樹くんは言わずもがな。
「えっと、二人とも、これは私の兄の邦月 暁、こっちは妹の胡桃。で、小中高一緒の朴月樹と、同級生の北条和樹くん。千佳は、知ってるよね」
紹介をすれば、お互いに頭を下げて挨拶を交わす。
「いつきおにーちゃんと、かずきおにーちゃん?」
「……姉御おまっ、なんだその膝の上の天使は!」
「妹さんかっわいいな……」
「胡桃ちゃああん久しぶりい今日も可愛いねぇえ!」
「胡桃が天使なのは当然のことだよ」
「うちの妹可愛いだろ」
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ステラさん» うわー嬉しいです!幸せだと言ってもらえることこそが幸せです!本当に励みになります!本当にありがとうございます!! (2022年2月5日 23時) (レス) id: 5d704cea99 (このIDを非表示/違反報告)
ステラ - 面白すぎて最近読み始めたのにもうここまできちゃいました!!!めちゃくちゃドキドキしてます!!素敵なものが読めて幸せです! (2022年2月2日 23時) (レス) id: 3475edfef8 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 彩華さん» ツボ!!!!!うれしい!!!!!!更新遅くて本当に申し訳ございません。励みになります。頑張って更新します〜!! (2021年11月20日 18時) (レス) id: aebfacbb01 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - Amamiyaさん» ありがとうございます!亀更新にもほどがありますが、完結させず放置することは絶対ございませんので、たまに覗きにきてやってください…!応援、励みになります! (2021年11月20日 18時) (レス) id: aebfacbb01 (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - やばい。ツボすぎます!一気読みしちゃいました!更新頑張ってください! (2021年4月1日 22時) (レス) id: da4daeacca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年5月19日 17時