第百六十三話 ページ14
一日目は神社巡り、二日目は甘味処巡り、三日目は余った時間で気になるところを散策、というスケジュールを組んだ私たち。
その間日常的な生活を何度か繰り返して、気づけば修学旅行は数日後に迫っていて。
「奏音ー! これから必要なもの買いに行かない?」
「いいよー」
暁に今日は少しだけ遅くなることを連絡すれば、すぐに既読がつく。
彼の学校は本当に授業なんてやってないんじゃないだろうか。
「樹たちもどう?」
「あー……参加したいのは山々なんだけど、俺は今日部活なんだよなぁ」
「俺は行けるよ」
「じゃあ三人で行こ! 買ってほしいものとかあったら買うよ?」
「うーん、特に思いつかねーし大丈夫! さんきゅな、知崎!」
千佳はひらひら、と手を振って、部活へ行く樹を見送る。
私たちは鞄を背負って、教室を出る。帰宅を急ぐ生徒たちの波に紛れながら、高校生らしい会話に花を咲かせていた。
今日は一日、朝先生に弁当を持っていく以外に先生とは会っても話してもいない。もちろん教師としてはちゃんと授業で会ったけど。
久々に先生がいない日常生活。ドキドキハラハラさせられない、普通で普通のこんな一日も悪くない。まったくもって悪くない。あんな先生でも過剰摂取は毒だと思うのだ。
先生の不在で感じた爽快感にん〜、と思わず気持ちいい伸びをしてしまう。
あの人にはいつも振り回されてばかりだからな。今日だけといわず、しばらく自由にさせてもらいたいものだ。
「お前らこれから買い物か?」
……そっか、私の思考はフラグを立てていたのか。
気持ちよく伸びをしていた私の後頭部にぽすりと置かれる先生の手。
最初こそドキドキさせられていたが、今では慣れてしまった。知ってますか先生、人間って慣れるんですよ。人間だけじゃなくてすべての動物がそうだけど。
「じゃー俺が新幹線の上で食う菓子買ってきてくんね?」
「……生徒にそんなもの頼むの、笹塚先生くらいですよ」
「この後ミーティングだし、俺今週中に溜まった採点片付けなきゃいけねーんだよ、頼むって」
和樹くんの苦笑を受けても悪びれることなく、先生は言う。
「たっくん先生のお菓子を買う任務、この知崎千佳が確かに承った! 先生ってどういうお菓子が好きなの?」
「んー、それはお前らの想像に任せる。レシートちゃんと取っとけよ、金は返すから」
そろそろミーティングの時間なのか、先生は手をひらりと振ってから踵を返した。
そんな先生の仕草に黄色い悲鳴。これももう慣れた。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ステラさん» うわー嬉しいです!幸せだと言ってもらえることこそが幸せです!本当に励みになります!本当にありがとうございます!! (2022年2月5日 23時) (レス) id: 5d704cea99 (このIDを非表示/違反報告)
ステラ - 面白すぎて最近読み始めたのにもうここまできちゃいました!!!めちゃくちゃドキドキしてます!!素敵なものが読めて幸せです! (2022年2月2日 23時) (レス) id: 3475edfef8 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 彩華さん» ツボ!!!!!うれしい!!!!!!更新遅くて本当に申し訳ございません。励みになります。頑張って更新します〜!! (2021年11月20日 18時) (レス) id: aebfacbb01 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - Amamiyaさん» ありがとうございます!亀更新にもほどがありますが、完結させず放置することは絶対ございませんので、たまに覗きにきてやってください…!応援、励みになります! (2021年11月20日 18時) (レス) id: aebfacbb01 (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - やばい。ツボすぎます!一気読みしちゃいました!更新頑張ってください! (2021年4月1日 22時) (レス) id: da4daeacca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年5月19日 17時