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第百五十一話 ページ2

「姉御ぉおおごめん! 本当にごめん!」
「平気平気、さっ切り替えて次のシーン行くよ!」

必死に謝ってくる樹の肩を軽く叩いて、切り替えを促す。
セリフを忘れてしまった樹を、私が次の流れにつなげていくためにフォローしたのだ。
おそらくタイミング的に問題はなかっただろうし、観客の中で気づいたものは誰もいないだろう。

「樹よりも、」

ぐる、と私は振り向き、問題の人を睨む。

「先生ですよ! なんですかあのアドリブ!」
「面白かっただろ?」
「面白いわけありますか! き、キス、なんて!」

手の甲だったけれど、公開処刑みたいな。明日には私全校の女子生徒から刺されるぞ、本気で!

「物足りなかったか、悪い。なかなか過激だな邦月」
「あなたの耳は何を聞いているんですか!!」
「まぁまぁ奏音、ほら、ラストシーン始まるよ」

ラストシーン。
出会う人たちすべてに気に入られたアリスは、ついに赤の女王様に見つかってしまう。
赤の女王様の言いなりになることを拒んだアリスは、女王様に処刑されそうになるのだ。それを守るのが、……あぁ、何の因果だろうか。帽子屋役の先生なのだ。

公式の物語内でも、マッドハッターは赤の女王の勢力とは敵対していたと取れる描写で描かれていた。
千佳の物語で、私のヒーロー役を彼が担うのもまぁ、うなずける。
納得は、したくないけど。

「ほら、次だよ!」

千佳に合図され、私はクラスメイト二人に腕を拘束された風を装って舞台に上がる。
跪くように力を入れられ、私はおとなしく従う。見上げれば、赤の女王役のクラスメイト。

「よくもこの私に逆らってくれたわね。大人しく従っていればこんなことにはならなかったのよ」
「……それでも、このアリスは貴方なんかのいうことに耳を貸さないわ」
「……頑固ね。醜く足掻きながら死になさい。この女を絞首台へ!」

トランプの衣装を着たクラスメイト達が、私を取り囲む。
万事休すか。アリスがそう顔を険しくさせたその時。

「俺の大切な客人を粗末に扱わないでくれるか、赤のクイーン?」

入り口からスーツの裾をはためかせながら入ってきたのは、言わずもがな先生で。
再びライブ会場ばりに観客が黄色い声をあげる。はぁ、私本当明日から背後に気を付けないと刺されると思うの。

「あ、なたは……マッドハッター……こんなところまで、何の用かしら?」
「もちろん、」

す、と先生が跪く。刺されるのは明日じゃなく今日か。

「彼女を救い出しに来たのさ」

ちゅ。

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設定タグ:ツンデレ , ドS , オリジナル   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ステラさん» うわー嬉しいです!幸せだと言ってもらえることこそが幸せです!本当に励みになります!本当にありがとうございます!! (2022年2月5日 23時) (レス) id: 5d704cea99 (このIDを非表示/違反報告)
ステラ - 面白すぎて最近読み始めたのにもうここまできちゃいました!!!めちゃくちゃドキドキしてます!!素敵なものが読めて幸せです! (2022年2月2日 23時) (レス) id: 3475edfef8 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 彩華さん» ツボ!!!!!うれしい!!!!!!更新遅くて本当に申し訳ございません。励みになります。頑張って更新します〜!! (2021年11月20日 18時) (レス) id: aebfacbb01 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - Amamiyaさん» ありがとうございます!亀更新にもほどがありますが、完結させず放置することは絶対ございませんので、たまに覗きにきてやってください…!応援、励みになります! (2021年11月20日 18時) (レス) id: aebfacbb01 (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - やばい。ツボすぎます!一気読みしちゃいました!更新頑張ってください! (2021年4月1日 22時) (レス) id: da4daeacca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2019年5月19日 17時

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