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第百五十話 ページ1

「ちょっと、私をどこに連れていくつもりなの?」
「遊べるところさ」
「休めるところだよ」

白ウサギをもう一度探そうとする私をとどめる双子。
舞台上の感情とは関係なく、少しだけ自分の鼓動が高まっている気がした。
だって、次のセリフは、もうあの人――

きゃあああっ、と急に観客が沸き上がる。
それだけで分かった。私の背後に、だれが立っているのかを。

「Jambo! お茶会日和だ」

そういって、先生はウィンクをしながらシルクハットを少しずらす。
そんなイケメンさあふれる動きに、再びきゃあああと声援が響き渡る。ここはライブ会場か?
樹は少しにやけていて、和樹くんも笑わないよう頑張りすぎてへの口になってる。頑張れ二人とも。
っていうか、本気でスワヒリ語使ってきた……たぶんスワヒリ語。スワヒリ語知らないし。

「……あなたは?」
「帽子屋さんさ」
「狂ったハッター!」
「君こそアリスだね。さぁおいで、主役がそろったところでお茶会を始めよう」
「お茶会って、今は何時なの?」
「三時さ」
「三時だよ」
「三時なんだ」

再び双子が私の周りをくるくると囲んで回りだす。
そんな二人に気を取られていると、背後から先生が近づいてきて私の左手をすっと掬い取った。

「可愛いアリス。君のためだけにティーセットを用意したよ、一緒にお茶会しよう」

ちゅ、と濡れた音。
先生は私の手の甲に、キスを、落とし、たのだ。
そんなものはもちろん台本にない。なんなら、可愛いなんてセリフもない。
かっと顔が赤くなるのを我慢することなど当然できず、私は思わず素で叫びそうになる。それはなんとか抑えることができたが。

「あっ……なたは、この世界のことを、教えてくれるの?」
「勿論。紅茶にケーキ、マカロンにマドレーヌ。お茶会をしながらたっぷり語ろう」

なんとか続きのセリフを紡ぐ。苦し紛れに睨んでみたら、彼は飄々と笑って返した。
あぁ畜生、私はこの後平然とセリフを言える自信がない。

「……いいわ、行ってあげる。あなたたちも来るんでしょうね? 何かを知っている口ぶりなんだからたっぷり聞かせてもらうわよ」
「ぁ……」

双子を振り向き言うと、ふと小さく樹が声を漏らした。
少しずつ青ざめていく樹に、私は何かを悟る。

セリフを、忘れたのか。
普段は同じような言葉をリピートしている双子だが、今回は樹と和樹くんでセリフが違う。和樹くんが助けてやることはできない。

それならば、と私は息を吸い込む。

「ついてきなさい、命令よ」

第百五十一話→



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設定タグ:ツンデレ , ドS , オリジナル   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ステラさん» うわー嬉しいです!幸せだと言ってもらえることこそが幸せです!本当に励みになります!本当にありがとうございます!! (2022年2月5日 23時) (レス) id: 5d704cea99 (このIDを非表示/違反報告)
ステラ - 面白すぎて最近読み始めたのにもうここまできちゃいました!!!めちゃくちゃドキドキしてます!!素敵なものが読めて幸せです! (2022年2月2日 23時) (レス) id: 3475edfef8 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 彩華さん» ツボ!!!!!うれしい!!!!!!更新遅くて本当に申し訳ございません。励みになります。頑張って更新します〜!! (2021年11月20日 18時) (レス) id: aebfacbb01 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - Amamiyaさん» ありがとうございます!亀更新にもほどがありますが、完結させず放置することは絶対ございませんので、たまに覗きにきてやってください…!応援、励みになります! (2021年11月20日 18時) (レス) id: aebfacbb01 (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - やばい。ツボすぎます!一気読みしちゃいました!更新頑張ってください! (2021年4月1日 22時) (レス) id: da4daeacca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2019年5月19日 17時

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