第百十一話 ページ12
「困りますね、邦月さん」
二時限目を終えて数十分の授業間の休憩時間。
私は反省文を提出しに来たのだが、目ざとく生活指導の先生につかまってしまった。
職員室のちょっと座り心地よさそうなオフィスチェアに股をかっぴらき座りながら、生活指導の先生は不快そうに言ってくる。
「あなたは模範生として扱ってきたのです、そんな先生たちの期待を裏切るような真似をされては」
口をつぐんだまま私は何も言わない。
まぁ、確かに先生たちをがっかりさせたのには変わりない。
「クラス委員長として恥だと思いませんか? あなたはクラス全員を率いる立場なのですよ、それなのに率先して問題行動を起こすとは」
だけどあまりにも言い過ぎではないだろうか。
こんな風に言われてしまってはおとなしく聞いてやる義理もなくなってしまう。右から左へ小言が流れていく。
ついつい視線を泳がせてしまい、ふと現国の教師と目が合う。
眉尻が下がり、すごく心配そうにちらちらとこちらを見てくる。だけどおそらく立場が生徒指導の先生より下なのか、何も言えずにこちらを見てきて申し訳なさそうな顔をした。
にこり、と笑みを返す。大丈夫です、お気持ちだけでも嬉しいです、という思いを込めて。
「おい、何笑っているんだ!」
「……すみません」
「話しかけてるのは俺だぞ、俺の目を見なさい! まったく、最近の若者は……」
それって最近の老害の口癖ですか?
少しいら、としてしまって私の口元は少しだけへの口に曲がる。
ぎゅ、と拳を握りしめて私は逆らうことなく直立を続けて先生の瞳を見据えた。
「なんだ、その反抗的な目は」
「そう見えてならすみません。生まれつきです」
「口答えか一生徒が図々しい!」
これはもう、生活指導と関係ないんじゃないだろうか。
ばん、とテーブルに拳を叩きつけられても私は表情を変えない。これでも社会の生き方は心得ている。頭の中ではたくさん毒づいてるけど、表面では従順に。これで大概はうまくいくんだからなぁ。
「まったく、お前みたいなのがクラス委員長だなんて、クラスの品格もうかがえるな」
「……」
ついに私が口を開こうとする。
そこまでいけばもう悪口だ。生活指導が必要なのはお前の頭だろう。
すぅ、と息を吸い込んで私は喋ろうとした。
「まぁまぁ、先生」
そんな私の口に大きな手がかぶせられて、私は驚きに目を見開く。
冷房のせいで随分と冷えた手。いつの間にか彼が私の後ろまで来ていた。
「一番反省してるのは彼女ですよ」
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - みっちゃんさん» ありがとうございます!これからもバンバン頑張ります!一気に読んでくださってうれしい…これからも何卒よろしくお願いいたします!! (2019年5月11日 19時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん - このお話大好きです!一気に読んだんですけどすっごい楽しいです!これからも頑張ってください! (2019年4月4日 2時) (レス) id: b4edfa4067 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - あだ名がンゴって…さん» うわー!ありがとうございます!そういっていただけただけですごくうれしいです。コメント励みになります。これからも頑張らせていただきます! (2019年4月1日 21時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
あだ名がンゴって… - 初コメ失礼します。あなたの文才、ください(切実)めっっっっちゃ好きですもうなんなんですか大好きです。更新頑張ってください!!! (2019年3月31日 11時) (レス) id: d0cbd630d9 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - セツナさん» うっありがとうございます(泣)尊敬に値するようにもっと文才磨きます!ゆっくり亀さんに呪われていますが頑張って更新させていただきます! (2019年1月9日 22時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2017年6月25日 13時