【2】サド教師とツンデレ生徒【名前変換オリジナル】

第七十三話 ページ24

「邦月、頼む、教えてくれ！」
「お願いだ！ジュースでも昼飯でもおごるから！一科目だけ！委員長！」
「姉御、私も教えて私も！」

ろくに眠れないまま朝を迎えた私は、出会ってすぐにクラスメイトという名の集団に襲撃された。
幸い無傷だが、目の前には全種七科目の教科書・ノートが差し出されている。
国語、英語、生物、数学、経済、化学、歴史。うーん、朝から感じていた頭痛が酷くなりそう。

「……とりあえず鞄をおろさせて」

米神を指で抑えながら、私は唸るように言う。
するとモーゼの十戒並に私の目の前に道が開かれる。
あぁ、現金なクラスメイト達め。

抑えきれないため息を陰鬱と吐きながら、重い足を自分の席に進める。
そこには既に千佳が、どこか顔を曇らせて立っていた。

「おはよ、千佳。 千佳も中間？」
「……聞こう、としたんだけど……やっぱりいいや！自分で頑張ってみる！」
「そう？分かんないことがあったら聞いてね」

なんとか微笑みを浮かべて見せると、千佳も可愛らしい笑みを浮かべて頷く。
あ、少しだけ千佳の微笑みに癒された……。

鞄をおろすと、私の背後に集まっている集団にようやく私は向き直る。
そして鞄の中から手帳を取り出し、中身を読み上げた。

「国語の範囲は単元1から3まで、英語は1から5、生物は3まで、数学は4まで、経済は4まで、化学は2までで歴史は7まで。 猶予は今日、明日と明後日しかないからちゃっちゃとやるよ」

パン、と両手を叩き私はクラス中に告げる。
期待を込めた瞳で見つめられては、NOとは流石に私も言えない。
それに、誰かに教えることだって効率のいい復習方法だ。

「歴史は範囲はでかいけど暗記が90％を占めるから、暗記しなきゃいけないものだけ教えて解散。 今日放課後教室残ってね。 国語も読解が主だから、練習問題を何問か一緒にやって解散。 これも今日の放課後。 ついでに一番範囲が小さい化学もやっちゃおう。 練習問題だけだから、化学も今日放課後ね。 英語は文法と単語の暗記、でも先生がちゃんとプリントアウトくれたでしょ。 そこから要点を抑えてちょっと復習するから、英語は明日の放課後。 生物も暗記。 明日の放課後。 厄介なのが数学と経済。 それらについては明後日放課後に教えるから」

オッケー？と確認を取ると、クラス中から声援を貰った。
早めにテスト勉強を始めておいてよかった。こういう時に役に立つんだから。

ようやく机に着き、私は次の授業の準備を始めた。

第七十四話→←第七十二話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す