80: 夢見た光景 ページ30
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一頻り遊び回って買い物をして、疲れた足をカフェで休めてまた歩き回り始めた。
こういう場所は蛍にとっては未知の世界と言っても過言ではないようで、どれだけ同じような風景が続いても瞳がキラキラしている。
流石に日が暮れるのも早く、レオとルカの髪の毛が景色に溶け込んだかと思えばもう空は藍に染まり始めている。
そろそろイルミネーションが輝き始める時間だ。
蛍「ねえっ、イルミネーションまだかな…♪」
「もう少しだから。でもイルミネーション点いて少し見たらすぐ帰るからな。帰りの時間もあるし」
月「まあ、蛍にとっては全部新鮮だもんな?」
蛍「うん!」
そうこうしている内に、空のグラデーションが藍で塗り潰されていく。
腕時計を確認し、短く声を上げてツリーを見上げた。
月「あぁ……綺麗だなぁ…!」
「すげえ…!」
ル「わぁ…!すごいね、蛍ちゃん…♪」
蛍「すごーい…!」
一気に明かりを灯したツリーに、周りからも一斉に感嘆の声が上がる。
イルミネーションというものは、どうしてこんなに輝いて見えるのか。それは1つ1つの電球が光っているからだけど、それが不思議に思えるくらい、綺麗だ。
でも、このイルミネーションもクリスマスが終われば片付けられてしまう。その事実に胸が疼いて、胸元をぎゅっと掴んだ。
イルミネーションに見とれているとレオが突然駆け出し、慌てて呼び止める。
「レオ!」
月「ストリートダンス!踊ってこう、ほらA!」
「ちょっ、引っ張んなよ!」
蛍「踊るの?わあっ、ルカちゃん行こう!見よう!」
ル「うん…♪」
大人数で踊っているから飛び入りOKみたいな雰囲気ではあるけど、いきなり突っ込んでくのはちょっとやり辛い…
それも気にせず、レオが笑顔で踊り始める。
踊りの輪の中にいて踊らないのもあれだから、少し控えめに踊り始めた。
踊っている間に楽しくなってきて、いつの間にか皆んなと笑い合って踊っていた。
いつだったか、車の窓ガラス越しに夢見た景色だ。あんな風にキラキラ光るツリーの前で笑って踊れたらきっと楽しいのだろうと、幼ながらに憧れた。
そんな景色が目の前にあることを実感すると、なんだか泣けてくる。泣かないけど。
月「ほらほらA、笑って!」
「っ…言われなくても」
キラキラ輝く笑顔のレオに引っ張られるように、今日一番の笑顔を見せた。
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2019年12月14日 3時