66: 兄弟 ページ16
「ん?あ〜、入れ違いっぽい?」
奏「ホントだ。そっか、零さんこれからが活動時間だもんね。ライブしに行ってるのかな?」
「ん〜……俺らだけでいても仕方ないし、ちょっと休憩したらライブ観に行こうか」
奏「うん、分かった」
頷く奏が置いてあったパイプ椅子に腰掛け、俺は棺桶の上に座る。話すことがある訳でもなく沈黙が続いていると、奏がキーボードに歩み寄った。
奏でられ始めたメロディに頬を緩め、小さく歌いはじめる。
「きらきら光る お空の星よ…♪」
奏「英語じゃないんだ?」
「ははっ、何となくな」
奏と一緒に交互に歌うのは、ライブとはまた違う楽しさがあるものだ。
歌い終えると、一度は点けた電気をまた消してライブを観に行くべく部屋を出た。
ーーー
ガヤガヤと賑わうステージに着くと、もう一曲は歌い終わっているらしくファンの声ばかりが響いている。
歌が止んでいるのにステージ上で何か動きがあるわけでもなく不思議に思って見ていると、誰かがステージへ上がるのが見えた。
その姿に思わず目を見張る。
奏「凛月!?あれっ?さっきもステージに立ってなかった?」
「立ってたはずだけど…なんだ?」
何が始まるのかとステージを見つめていると、凛月と零が向かい合った。
横顔を見ると、奏と渉と同じで兄弟なんだとよく分かる。あんな風に血の繋がった兄弟がすぐ側にいるっていうのは、少しだけ羨ましくもあって。
凛月と零の関係は複雑らしいけど、凛月には本当に零への愛が無いかと言えばそんなことは全くない。
何を話しているのかはよく分からないけど、きっと今回の凛月の体調不良のことだろう。
Trickstarとの一悶着もありながら皆んなと同じ時間に起きていようと踏ん張って、疲れて当然だ。零はそれをやめろとも言えないから不器用なやつだとつくづく思う。
「いいなぁ、兄弟って」
奏「……レオくんが居るでしょ?」
「そういう意味じゃないよ」
今日何度目かの怪訝そうな表情に苦笑して、背中合わせに立ったステージ上の2人を見る。
ハロウィンパーティーなんてこんなに楽しい時間、2人に幸福な時間があれば良いと願った。
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2019年12月14日 3時