51: レッスン ページ1
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「おーい奏、稽古つけてあげよっか」
奏「えっ」
零「おや。突然入って来て挨拶も無しとはのう」
Trickstarが居ない一週間のある日、軽音部室で零と談笑していた奏に声をかけた。
零が揶揄い混じりに言ってきたので、棒読みの挨拶を返してまた奏に問いかける。
「なんだよ、嫌か?」
奏「あっ、ううん、珍しいなぁと思って。ぜひお願いします!」
「とゆーか一緒にレッスンしよう。これから」
「これから!?」と驚く奏を引っ張り立たせて、自分勝手さに苦笑する零に視線を向ける。
「お前の愛し子、ちょっと借りるよ」
零「おぬしらはユニットの仲間じゃろう。断りなんぞ要らぬわ」
奏「じゃあ零さん、また」
微笑んで頷く零に手を振る奏は幸せそうな笑顔を浮かべていて、自分の元に繋ぎ止めておくことに罪悪感すら覚えてしまう。
それを言うと怒った顔をするから困ったもので。つむぎ風に言えば、今時の若い子が分からない、と言ったところか。
ワクワクした様子で手を引く奏に笑みを零して、レッスン室へ急いだ。
奏「久し振りだね!でもどうして突然?」
「俺冬場は体調崩しやすいから、やれる時にやんないと。それに…Trickstarが戦ってんのに何もしないと、ちょっとむず痒いだろ?」
奏「負けず嫌いもいいとこだね…」
苦笑する背中を押して、鏡の前に立つ。
俺たちのユニットは、少しクラシカルな雰囲気が人気らしい。ジャズの曲調やロンド形式を取り入れること、3拍子を入れたりすることがその秘訣だろう。
衣装も少し古風になるように調整しているし。
あまり派手なダンスは取り入れず、舞台演出に力を入れる。観客に感動と、何より驚きを与えること。それが俺たちの流儀だ。
「こら奏、サボるな。踊れ踊れ〜」
奏「目敏いなぁ…」
「俺がこういう奴なの知ってるだろお前」
軽やかにステップを踏むのを眺めながら、頭の中で舞台演出の案を練った。
こういう時に限ってインスピレーションが降りてこないのは何とかならないものか…
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2019年12月14日 3時