１２１: 事件 〈過去編〉 ページ21
いつも通りに煩い弓道場で弓を引いていただけの、ある日の事。
煩いのはいつもの事だから、然程気にせずに弓を引いていた。深呼吸して、構えた時。
月『やめろよっ！』
『えっ…』
.『何だよ！』
レオくんの叫び声が響き、ビックリして弓を下ろした。
そこからの事は、よく覚えていない
だけど、猫を抱いて逃げ回るレオくんと怖い顔で追いかけ回す不良たちが居た事は覚えている。
止めようと、思ったんだ。でも足が動かなかった。
月『ぅあ"…っ！』
レオくんの苦しげな声に、ハッとして意識を引き戻す。でも、もう遅かった。
倒れるレオくんと、慌てて後ずさる不良たち、レオくんの腕の中で力無く鳴き続ける猫。
思考が全く追いつかなかった。それでも何とか足を動かして、レオくんを背に庇う。
『早く消えろよ！』
.『ぁあ"！？』
『消えろって言ったんだ！俺の友達に手ぇ出すな！』
掴みかかられる直前に、不良たちの１人が掴みかかろうとしてきた奴の肩を掴んで引き止めた。
何かを耳打ちされると、顔が青ざめてすぐに離れていき、怖い顔のまま全員で駆け出して行った。
弓道場に２人だけになり、さっきまでの事が嘘のような静寂に焦りが滲む。
『レオくんっ！待ってて今誰かを__
月『なあA…』
弱々しい声で名前を呼ばれ、道着の裾がグッと引かれた。戸惑いながらも傍らに座り込むと、その光景に息を飲んだ。
『っ何してるのレオくん！』
レオくんは……腕から流れる真っ赤な血で、五線と音符を書いていた
嬉しいなぁ、得したなぁ、なんて意味の分からない事を口にしながら。
月『なぁ…おれ、得したよな…？後世に残る名曲だぞ…世界の財産だろ…？』
『な…何を、言ってるの…っ』
月『後世に残る名曲に…なるんじゃないのか…？ならないのか？』
『レオ、く…っ』
血に濡れた手で道着を掴まれ、レオくんの濁った瞳から、涙がパタパタと零れ落ちる。
月『痛いよ…助けて……』
『レオくん…』
月『痛い…痛いよA…』
『レオくん』
月『助けて…なぁ得しただろ…？』
『レオくん！』
涙が溢れて止まらなかった。
恐怖と焦りと後悔、悲しみや苦しさに怒り、色んな感情が混ざって混ざって、声が出なかった。
血塗れで床をなぞる華奢な手をそっと止め、震える手で握りしめる。
ママが来るまで、ずっと泣いている事しか出来なかった。
あまりに無力で弱い自分が、大嫌いになった
.
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瑠璃烏(プロフ) - 推しが可愛すぎさん» 感動していただけた事に涙ですっ｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡ご期待に添えるよう、頑張ります！ (2019年11月18日 19時) (
レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 如月さん» 閲覧頂きありがとうございます！夏目くんとの関係、エピローグにて書いております(^-^) しばしお待ちを！ (2019年11月18日 19時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
如月 - とてもおもしろかったです！自分的には夏目くんとの関係がみたi ��(ﾟoﾟC=(__:次回作も楽しみにしてます！ (2019年11月18日 0時) (レス) id: 9471f73ad6 (このIDを非表示/違反報告)
推しが可愛すぎ(プロフ) - なんか感動と涙しかありませんでした！(あれ同じ？)好きだったので続きとかまだ見たかったですが次回作がんばってください！ (2019年11月18日 0時) (レス) id: b43a5c5bee (このIDを非表示/違反報告)
黒影(プロフ) - 12月にもう1回ですか……頑張ってくださいね (2019年10月30日 17時) (レス) id: 18284fa39e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑠璃烏 | 作成日時：2019年10月19日 1時
