戦え舞え舞え藤の花 (ページ6)

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『A、辛ければ直ぐにやめるように。お前が柔でない事は重々承知しているつもりだが…』

『大丈夫。心配しないで、おじ様』

「___っていう会話をしていたけど、君と鱗滝さんはどういうご関係なの？」

山へ登る道中で炭治郎とはすっかり打ち解け、今朝の会話について聞かれたのでなるべく簡潔に答えた。

「私、元々は藤の家紋の家で…父は幼い頃に病で亡くなって、母と姉は外出中に鬼に襲われて。その時、私だけ炎柱様に助けて頂けてね。行き倒れていた所をおじ様が拾ってくれたの」

「え、えっと…なるほど…？」

「ふふっ、またいつか詳しく話すから。さあ、山降りしよう」

「うん！」

ゆっくり静かに、長く長く息を吐く。

感覚を研ぎ澄ませ。

よく聞いて、よく見て、匂い…はよく分からないけど

人よりも良いらしい耳を澄まして、山の音を聞く。

なかなか炭治郎が駆け出さないので私が先陣を切って駆け出した。

ーーー鱗滝side

Aには見せなかった、２枚目の文。

その内容は『何故 Aに稽古を付けないのか』といったものだった。そしてもう１つ。

『鬼を目の前にした時のAはAではない』

という事。

これには心当たりがあった。

鬼を目の前にしたAからは＂憎い＂以外の感情の匂いがしない。ただ鬼を殺す事だけを目的とし、殺せるのならどんな手段でも使うのだろう。

実際、そういう事もあった。

一度だけ数体の鬼と遭遇した時、Aは襲い掛かった鬼を自分の手で殺した。首を跳ね、頭を潰した。

返り血に塗れ、肉片に塗れ、鬼が完全に動かなくなっても尚鬼の頭に岩を打ち付け続けていた。

しかもその後、自分で鬼を殺した記憶は無いと言う。

高い身体能力、そして人より遥かに良い耳、そして鬼に対して限りの無い恨みを持つAが鬼殺隊に入れば…強い隊士に、いや、柱にすらなるかもしれない。

でもそうしたらAの命は？

娘と同じように育てて来たあの子が自分の手から離れていくなど想像も出来ない。

そう、思っていた。

「おじ様！」

「A、怪我は………ん？炭治郎はどうした」

「ん？あ…置いて来ちゃった…！？」

ハッと青ざめるAを見て思わず呆ける。

あの罠だらけの山をこれだけ速く降りて来た…

やはりこの子には、才能がある___

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