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29 良薬は口に苦し ページ29

冨岡side



Aは耳が良い。


他人には聞こえない音を聞くことが出来る。幼い頃から、鳥の声で必ず目を覚ましてしまう子だった。

ただそれは聞こうとしなければそれ程でもないらしく、普段は他人より少し耳が良い程度らしい。


でもAの意思に関係なく、"聞こえてしまう"のだという時がある。心音すら耳に入ると言うから、相当煩いだろう。

それは精神が不安定な時…例えば物凄い恐怖を感じた後であったり、物凄い怒りを感じている時であったり。

そんな時のAは目も当てられない程に暴れ、叫んだ。


今回も例に漏れず、隠の男を蹴り飛ばした挙げ句に拘束していた縄を引きちぎり、泣き叫び耳を塞いだ。

あの縄を引きちぎるだけの力が出せる…ならば、鍛えれば相応の剣士となれる筈。


こんな怪我などしない程に。


眠るAの腕に残る、包帯に巻かれた痛々しい傷を包帯越しにそっと撫でる。その時、扉が開く音と共に柔らかい声が部屋に響いた。



「冨岡さん、この子とはどういうご関係で?『お兄ちゃん』と呼んでいましたね。ご兄弟ですか?」


「いや……幼い頃、一緒に育った」


「毒が回っていながらカナヲと互角にやり合ったそうですし…才のある子なのでしょうね」



黙ってAの髪の毛を撫でていると、充分な沈黙を経て静かな声で問い掛けられる。



「継子にするつもりですか」


「………分からない」



柔らかな頬からするりと手を離して、部屋を出た。









ーーーAside









「待って!?善逸より私の方が手小さくない?やだやだちょっと!何で!?」


「そりゃあ元々Aの方が小さいんだから善逸より小さく見えるんじゃないか?」


「あ、そっか」


「でもAちゃん、女の子にしては背が高いよね。俺のひとつ年下だけど身長差あんまないし」



そうかなぁと首を傾げているところに、二つ結びの女の子…アオイちゃんがやってきた。

その瞬間、善逸はバッと布団を被って隠れて(?)しまう。私が首を傾げていると、アオイちゃんは笑顔で歩み寄って来る。



「お薬の時間なので来たんですが、Aさんは素直に飲んでくれそうで嬉しいです!さあ、どうぞ」


「あ、はい。ありがとう」



湯呑みに入った薬が口の中に入った瞬間、善逸が隠れた意味が分かった。



「にっ…が、い…」


「さあ、善逸さんも!」


「いやぁああぁ!!!!」


「に…苦い…炭治郎……」


「えぇええAーーーっ!!!?」



阿鼻叫喚。

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瑠璃烏(プロフ) - 澄葉流さん» ありがとうございます!頑張ります! (2020年2月27日 11時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
澄葉流(プロフ) - とても面白いです!更新頑張ってください! (2020年2月26日 22時) (レス) id: 73c9d55ae5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2020年2月26日 16時

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