びっくりな朝 ページ39
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ピンポンと呼び鈴が鳴ったような気がして食器洗いをしていた手を止めるが、千影さんはそんなわたしを「手濡れてるでしょう」と制した。
モニターに向けて、今出ますねと返事をする千影さんを尻目に食器洗いを再開する。鼓膜を震わせるのが流水音だけだというのは、すごく平和なことだと思いつつ、4本の箸を束ねてスポンジをゴシゴシ擦りつける。
「こんな朝から訪ねてくるなんて、いったい誰なんですか？」
口を尖らせ、勝手に無礼者扱いをしていると、千影さんが簡単な身支度を始めた。
「そうね。ちょっと行ってくるわ」
「あれー。印鑑はいらないんですか？」
「配達員ではないから大丈夫よ〜」
寒期特有の白っぽい日の光がさしこむ玄関に、パタパタというスリッパの音が心地よくひびく。
誰が来たんだろうと思いながら流れていた水を止めると、鳥のさえずりに混じって千影さんの申し訳なさそうな声が聞こえてくる。あの千影さんが謝るなんて。そう驚いていると、
「はぁ、Aなんか心配してやるんじゃなかった」
自分の名前に反応して思わず振り返ると快斗くんが立っていた。
「なんで……？」
「俺だったら何か悪いか？」
そう疲れたように溜息を吐く快斗くんは当たる前のように入院服を着ていて、思わずぎょっとする。
「入院服を着たままの理由なんて、そんなの……天下の怪盗キッド様だぞ？」
「えっ？」
ドヤ顔の快斗くんを前に目を白黒させていると、千影さんが困ったように頰に手を当てた。
「快斗ね、抜け出したんですって。日本警察もずいぶんと落ちぶれたものね」
やれやれといった風に補足してくれたが、わたしは口を半開きにするしかなかった。
「いや、警備がずいぶん手強かったぜ。まるで俺が怪盗キッドだと知ってるような感じだったな」
「あらぁ。ひょっとすると、それ事実かもしれないわ」
「ま、まさかなぁ。えっ母さん？」
「あらっ、やだー。冗談にっ、決まってるじゃない、ふふふっ」
目尻に涙を浮かべて笑いを押し殺す母親(ファントム・レディ)と、冷や汗を流して笑顔をひきつらせる息子(怪盗キッド)の2人を居候中のわたし(死人)が生暖かく見守る。何と数奇なシーンだろうか。
まあ、混乱と驚愕の気持ちはひとまず置いておいて、
「……これって冗談だと思う？」
ふと訊いてみると、快斗くんは答えの代わりに乾いた笑いを漏らしたのだった。
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たんぽぽ珈琲(プロフ) - ちょっと内容を変更しました。97から100話、もう一度読んでいただけたら嬉しいです。それでは、今度こそ続編の準備をしてきます！ (2020年5月23日 18時) (
レス) id: bfc4d62160 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - お久しぶりです。100話が終わり、次章へと進みます。主人公の心の成長を伝えられたらと思って書いていますが、なかなか難しいですね。次章では、大きく分けて三つの問題について主人公が悩みます。それでは、ハッピーエンドへ進めるよう準備してまいります！ (2020年5月18日 14時) (レス) id: 768bd78820 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - こんばんは、たんぽぽ珈琲です。コロナウイルスで色々と状況が変化していますが、動かなくていいのだと思って、お菓子を作ったり編み物をしたりと、有意義な時間を過ごしていました。平和ボケしているかもしれませんが、みなさんもこの時間を楽しめていたらと思います。 (2020年4月8日 19時) (レス) id: bfc4d62160 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - 明けましておめでとうございます！先ほどスケート滑って転んで手首腫れて痛くて包帯まいてもらった作者です。本日更新したおはなしは「言えずにいたこと」です。最後となりましたが、今年もよろしくお願いします！ (2020年1月5日 13時) (レス) id: bfc4d62160 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - こんにちは、作者です。生活に慣れてきたので、そろそろ更新しようかなと思っています。お待ちくださっている読者さま、ありがとうございます！ 初めて投稿した作品なので辻褄の合っていない部分などありますが、完結させたいと思います。以上、告知でした！ (2019年9月18日 10時) (レス) id: bfc4d62160 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たんぽぽ珈琲 | 作成日時：2018年10月28日 14時
